最後の瞬間まで自分らしく生きる 高齢の性的少数者同士の出会いを支えたい
新たな人生に向き合い始めた生島さんは、意識的に父に歩み寄る努力をした。当時付き合っていた彼氏を家族の集いに連れて行ったり、彼を交えて弟夫婦と交流したりし始めたりしたのだ。両親も生島さんの当時のパートナーを大変気に入り、「これまでは男同士のパートナーというものが想像できなかったけれど、あの子ならいいわよね」と話をするまでになった。 「当時の彼とは結局8年で別れてしまい、現在部屋の中には彼とお揃いで買った指輪が一つだけ残されています。しかし家族との良好な関係づくりを後押ししてくれたのは紛れもなく彼でした。そのことには今でも深く感謝をしています」
時は経ち、自身も年齢を重ねて60歳を目前とする現在、 生島さんにはいつか実現したいと思っていることがある。周囲は高齢化社会となり、、自身や付き合って7年目になる40代前半の現在のパートナーもそれぞれに年齢を重ねた。周囲にはパートナーと暮らしている者もいれば、一人きりで年老いていくことに不安を抱えている者もいる。そんな状況の中で、高齢の性的少数者同士を結びつける手助けができないかと考えているのだ。 その昔、偶然目にした『OUT IN AMERICA』というアメリカの性的少数者を撮り下ろした写真集の中に、寝間着姿のゲイのおじいちゃんたち二人が仲睦まじく朝食の準備をしている写真を見つけた。二人はアメリカにいる高齢の性的少数者を支援する目的でつくられた団体の援助にて、お互いに年齢を重ねた後に出会い、共に暮らし始めていた。 「まだまだ全く具体的にはなってませんが、将来的には血縁のつながりだけではない中で、最後の瞬間までみんなで生きていけるコミュニティーや社会をつくるお手伝いができればいいと思っていますね」 生島さんは今後も自身が果たすべき役割についての自覚を強め、これまで以上に積極的に歩みを進めていくのであろう。それは活動家として。そしておそらく一人の人間として。 (取材・文・撮影/ 藤元敬二)