【周回遅れの日本の盗聴捜査】米国で起きた“重大事件”、闇バイト対策で税金の無駄遣いはするな
自民党の高市早苗前経済安全保障担当相が11月25日に長野県松本市で行った講演での発言に関して、2チャンネルの元管理人で実業家のひろゆき氏がすぐさまX(旧ツイッター)で反応している。 【写真】中国からの通信事業者へのハッキングを受けて発表された対策 高市氏は講演で、相次ぐ闇バイト強盗事件への対策として、警察による通信傍受の強化や、警察が身分を偽装して行う仮想身分捜査の導入を検討すべきだとの考えを示した上で、「命に関わるような事件が次々に起きている。警察が様々な捜査手法を使えるようにしたい」と述べた。 この発言に対してすぐさま反応したのがひろゆき氏で、27日に自身のXで「テレグラムの通信を傍受して、暗号化された内容をどうやって復号するの?」「ITのことわからん人達が調べもしないで『なんとなく出来るんじゃね?』という想像で税金使って失敗するのは辞めて頂きたいです」と投稿した。
仮想身分捜査の法整備
仮想身分捜査とは、身分秘匿捜査(Undercover Operation:別称「秘密捜査」、「潜入捜査」、「おとり捜査」)の一種で、違法薬物やマネーロンダリング、売春斡旋などに用いられる捜査手法。特に仮想身分捜査という場合は、インターネット上に実在しない架空の人物や企業を作り上げ、その身分を用いて犯罪者に接触し、犯罪の証拠を収集する手法をいう。日本では身分秘匿捜査や仮想身分捜査は、適法性という面でグレーな扱いのため、捜査当局は避ける傾向にある。 高市氏の発言で議論が深まり、仮想身分捜査の運用基準が明確化され、適法に捜査が行われるようになれば、犯人も迂闊には闇バイトの募集ができなくなるのではないだろうか。
メッセージングサービスの通信傍受の困難さ
犯罪組織が、通信傍受が不可能なTelegramやSignalといったメッセージングサービスに移行しつつあることは、前回のこのコラム「【通信アプリ「シグナル」と「テレグラム」の違い】闇バイトに悪用、シグナルへの摘発はあるのか?」ですでに詳述した。TelegramやSignalといったメッセージングサービスは、メッセージや通話内容が、携帯電話などのデバイスを離れた瞬間から相手のデバイスに届く瞬間までの間が暗号化されるエンドツーエンドの暗号化(E2EE: End to End Encryption)を基本としており、通信の秘密が保護される仕組みが採用されている。 エンドツーエンドの暗号化メッセージの内容を知ることができるのは、送信者と受信者のみであり、サービスプロバイダはもちろんのこと、メッセージングサービスを提供しているプラットフォーマーでさえもその内容を知ることは不可能である。したがって、ひろゆき氏が指摘するように「テレグラムの通信を傍受して、暗号化された内容をどうやって復号するの?」は正しく、税金の無駄使いになりかねない。