韓国の後塵拝す日本の低賃金、政府や経営者だけの責任ではない、労働者側の問題点
日本の労働者の平均賃金は、諸外国との比較の中で順位を落としています。この30年間、停滞し続け、今では韓国にも逆転されました(OECD調べ、下図参照)。低賃金は、国家的な大問題です。 【ランキング】平均年収「全国トップ500社」 現在は参院選の最中で、各党が「持続的な賃金の引き上げを」(公明党)、「企業は内部留保を活用して賃上げを」(共産党・社会民主党)、「最低賃金を1500円以上に」(共産党・れいわ新選組)などと低賃金解消に向けた政策を訴えています。
ただ、問題を解決するためには、政策を訴える前に原因を明らかにしなくてはいけません。低賃金の原因については、よく「日本の労働者は能力が高いし、勤勉で懸命に働いている。しかし、政府の政策が悪く、経営者が無能なので、なかなか賃金が上がらない」と言われます。 ここで個人的に引っかかるのは、「日本の労働者は能力が高いし、勤勉で懸命に働いている」という部分です。本当に低賃金は政府や経営者のみに責任があり、労働者には問題がないのでしょうか。
日本の低賃金については、昨年、企業サイドの構造問題を考察しました(日本だけが「低賃金から抜け出せない」2つの理由)。今回は、労働者サイドに焦点を当ててこの問題を考えてみましょう。 ■労働生産性で賃金水準が決まる 経済学の原理では、賃金水準は労働生産性で決まります。「生産性」とはアウトプット÷インプットで、「労働生産性」は次の式で計算されます(色々な計算方法がありますが、最も代表的なもの)。 労働生産性=付加価値額÷労働者数
日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2021」によると、2020年の日本の労働生産性は、7万8655ドル(809万円)でした。OECD加盟38カ国中28位(前年は26位)で、1970年以降最も低い順位です。 低賃金については、よく「経営者がケチって賃金を出さないのが悪い」と指摘されます。岸田文雄首相も「新しい資本主義」で分配の強化を目指していますが、本当に分配が少ないことが問題でしょうか。 企業が生み出した付加価値のうちどれだけ労働者に賃金を分配しているかを表わすのが、労働分配率(=人件費÷付加価値)。この数値は年によって変動が大きいですが、概ね6割前後で、日本は先進国の中で特に高くも低くもありません。日本の低賃金は、付加価値の分配が少ないことによるのではなく、そもそも付加価値が少ないことによるのです。