怪しげな“うわさ”でネットはざわざわ…突然破産した船井電機に学ぶ「企業の危ない兆候」
老舗AV機器メーカーの船井電機が2024年10月24日に破産手続きに入ったというニュースに関連して、ネット上ではその経緯に怪しげな動きがあったとさまざまな書き込みが飛び交って話題になっています。
◆「ミュゼ転がし」なる造語まで生まれて
朝日新聞や複数のWebメディアの報道によれば、同社はここ数年本業の業績が思わしくなく、23年4月に新たな事業分野に活路を見いだすべく脱毛サロンチェーンのミュゼプラチナムを完全子会社化しているのですが、その前後から急激に経営の雲行きが怪しくなっていったというのです。 ミュゼプラチナムは子会社化から1年後の24年3月に売却されていますが、この間に多額の資金が流出したといいます。 23年3月末に221億9600万円(同社事業報告書)あった現預金は、「10月25日の従業員給与1億8000万円を出金すると運転資金が1000万円を下回る状態」(東京商工リサーチ)に至り、破産に追い込まれたのでした。 「買収したミュゼプラチナムへの資金支援などによる多額の資金流失も大きかった」(同)と報じられたこともあって、ネット上では「ミュゼ転がし」なる造語まで生まれ、M&Aを機に何者かに大量の資金を抜かれたのではないかとの臆測も飛び交っているのです。 うわさの真偽はさておくとして、従業員が次々辞めていくといった目に見える兆候はないまま、船井電機は突然終焉(しゅうえん)を迎えています。 一般的に企業経営が倒産、破産、廃業に至るようなリスクをはらむ兆候はどのようなところに現れるものなのか、筆者の銀行マン的なものの見方も含め船井電機の事例を引き合いにしながら考えてみたいと思います。
◆会社のトップが交代するリスク
経営がおかしくなる引き金は、本業の低迷であることがほとんどです。船井電機の場合もそうでした。 本業のテレビ事業が低迷を続ける中、それに代わる新たな事業の柱を見つけることがままならず、12年から上場を廃止した21年まで些少の黒字に転じた1期を除いて、すべて営業赤字を計上する長期低迷状態にありました(22年以降は、利益情報は非開示)。 1期や2期の赤字はさほどの心配はいりませんが、長期にわたり赤字決算が続くとなるとさまざまなリスクが噴出してきます。 一つは「トップの交代リスク」です。前任者が業績低迷の責任を取って退任したとしても、後継者がしっかりと後を継いでいるならば大きな不安はありません。しかし、後任が短期間で複数回交代する、あるいは外部異業種から代わる代わる経営者が入り込んでくるとなると、経営が不安定になりさまざまな問題が起きる兆候となり得ます。 船井電機の場合も、14年~17年の短期間に返り咲きを含む3人が交代で社長を務めています。また21年の上場廃止後は、外部からの異業種出身者が立て続けに2人が社長を務めたところで経営は終焉(しゅうえん)を迎えました。 同社のように、そもそも同族経営でありながら同族筋に後継がいない場合は、事業継続に関するリスクが増大すると考えていいでしょう。