考察『光る君へ』38話 中宮・彰子(見上愛)と近過ぎる敦康親王(渡邉櫂)の元服を急ぐ道長(柄本佑)…『源氏物語』という虚構が、現実に影響を及ぼし始めた
現実に影響を及ぼし始めた『源氏物語』
藤壺を訪れた道長が目にしたのは、近過ぎる敦康親王と彰子の姿だった。胸をよぎるのは『源氏物語』の光源氏と藤壺の宮の関係──不義密通。実際に彰子と敦康の間にそうしたことが起こらなくとも、内裏ではまひろが書いた物語を皆が読んでいるのだ。この先、彰子が産むであろう子らに「敦康親王との不義の子では」という疑いの目が向けられることは、絶対にあってはならない。すぐに親王様を元服させねば。 『源氏物語』という虚構が、現実に影響を及ぼし始めた。 彰子がふたたび懐妊し、土御門殿へ宿下がりした。その間に藤壺でボヤがあり、敦康親王は 伊周の屋敷へ。伊周の嫡男・道雅(福崎那由他)は「藤壺の火事とて誰の仕業かわかりませぬな」……中宮のいない間に敦康親王を藤壺から追い出そうと、道長が放火を命じたのではと遠回しに言う。 その言葉をきっかけとして、伊周が道長のもとを訪れた。そしてついに 「なにもかもお前のせいだああああ!」 憎しみが決壊して溢れ出し、厭符を叩きつけて直接呪詛! 憎悪と自らの呪詛で心が壊れてしまった伊周、三浦翔平の凄まじい演技に大河ドラマ『平清盛』(2012年)崇徳院の「日本国の大魔王となりて皇をば民に引き下ろし民を皇となさん」を思い出す。そして崇徳院は『光る君へ』で伊周の父・道隆を演じた井浦新だったのだ。……井浦新の崇徳院は作品の中で「生き切った」。伊周の人生の幕は、どう降ろされるのだろう。 呪詛をまともに受ける道長を、まひろが目にする。無言で見交わすふたり。10話でまひろは道長に説いた。 「道長は偉い人になって、直秀のような理不尽な殺され方がする人が出ないような、よりよき政をする使命があるのよ」 「あなたのことを見つめ続けます。政によってこの国を変えていく様を死ぬまで見つめ続けます」 その使命を背負い朝廷の頂に立って政を動かす道長が、呪詛を受けるほどに憎しみを浴びる姿。そんな彼を見つめることになるとは、あの若き日には想像もしていなかった──まひろの目に涙が滲む。 次週予告。 隆家の涙。伊周、逝く。一条帝の体調不良! 成長著しい敦康親王(片岡千之助)、そりゃ元服を急ぎますわ! ぎこちない親子関係の裳着の儀式リターンズ。惟規(高杉真宙)……史実は常に無情!!! 39話、おそらくハンカチかタオルを用意しなきゃいけない回です。 ******************* NHK大河ドラマ『光る君へ』 脚本:大石静制作統括:内田ゆき、松園武大 演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろう 出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、見上愛、塩野瑛久、岸谷五朗 他 プロデューサー:大越大士 音楽:冬野ユミ 語り:伊東敏恵アナウンサー *このレビューは、ドラマの設定(掲載時点の最新話まで)をもとに記述しています。 *******************
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