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『進撃の巨人』いよいよクライマックス間近! 残酷な展開で読ませる、諫山創の真骨頂

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リアルサウンド

 第32巻が発売され、今まで以上に緊張感が増している『進撃の巨人』(講談社)。月刊誌の『別冊少年マガジン』で諫山創が11年に渡って連載している本作は、巨大な壁に囲まれた街を襲う巨人たちと人類の戦いを描いたダークファンタジー。謎が小出しにされていくミステリアスな物語と、魅力的なキャラクターたちが織りなす複雑な群像劇が話題となり、本作は2010年代を代表する大ヒット漫画となった。 【画像】『進撃の巨人』最新32巻  2019年末に刊行された第30巻では、巨人誕生にまつわる世界の謎がついに解明され、いよいよ物語はクライマックス間近。しかし、巨人を前にしても団結できずに争い続ける人間の弱さと残酷さを容赦なく描いてきた本作だけに、なかなか一筋縄ではないかない。 以下ネタバレあり。  この32巻では、今まで対立していたパラディ島の調査兵団たちと、彼らを滅ぼそうとしていたマーレ軍の残党が共闘する場面が描かれた。  始祖の巨人の力を手に入れたエレンは、おぞましい姿に変貌しパラディ島の壁の中に閉じ込められていた巨人たちを開放し、パラディ島以外の世界を「地ならし」で滅ぼそうとする。  ミカサ、アルミン、ジャン、コニー、ハンジ、リヴァイたち調査兵団の生き残りと、マーレ軍の生き残りのライナー、ピーク、マガト、アニ、戦士候補生のガビとファルコ。捕獲された反マーレ派義勇兵のイェレナとオニャンコポンたちはエレンの虐殺を止めるための同盟を組むために、シチューを食べながら語り合うのだが、今まで殺し合っていた人々が簡単に団結できるわけもなく胃が痛くなるような気まずい雰囲気が続く。  そして仲間のマルコをライナーたちが殺した際の話となった時に、ジャンがブチギレてライナーに飛びかかる。「俺達はまだ話し合っていない」というマルコの最期の言葉を知ったことでみんなが一致団結しようと思いながらも中々、わだかまりが消えないという苦しい現実を、これでもかと本作は描き続ける。  その後、ミカサたちは飛行艇を借りるために、パラディ島に駐在するヒィズル国のアズマビトに接触しようと港へ向かうのだが、すでにエレンを支持するイェーガー派の兵士たちが占拠しており、アズマビトのリーダー・キヨミと技術者たちを拘束していた。  兵士を皆殺しにして飛行艇を奪うと主張するアニに対し、ミカサたちは、アズマビトがいないと飛行艇の整備ができないと反論。同時に、同じパラディ島の仲間であるイェーガー派の兵士たちから死傷者を出したくないとためらう。ここまで来て、目的のために仲間を犠牲にしていいのか? と問いかけるのが本作の残酷さだ。  結局、ミカサたち調査兵団も作戦に加わり、キヨミたちアズマビトを救出するのだが、その過程でかつての仲間を殺し、アルミンも負傷する。こういう船や飛行船を奪還する作戦は映画やアニメで何度も見てきたが、たいていは味方側がうまい作戦を思いついて、犠牲をほとんど出さずに成功させるものだ。しかし本作は、このような前哨戦も丁寧に描き「戦いには必ず犠牲者が存在するのだ」と、繰り返し見せる。  すでにエレンが起こした「地ならし」を止めなければならないという最終目的が提示されているため、モタモタせずに早く話を進めてくれと、たまらない気持ちになるのだが、このジリジリと進んでいく嫌な手触りこそが、漫画家・諫山創の真骨頂だ。  飛行艇が搭載された船を奪還し、アズマビトとともに逃亡するアルミンたち。一方、マーレ軍のマガト元帥は、イェーガー派の増援を食い止めるために港に残る。そこにミカサたちの教官だったシャーディスが現れ共闘し、マーレ軍が残した巡洋艦を爆破する。内側に潜入して、船を爆発させることで自ら犠牲になるマガトとシャーディス。敵味方の陣営に別れて殺し合っていた2人が、最後にお互いを称え合った末に名前を名乗り合う姿は、絶望的な展開が続くこの巻の中で唯一の希望と言える場面だろう。  しかし生き残ったミカサたちを待っているのは更なる絶望だ。エレンが率いる巨人たちが、大陸を踏み潰すまでにかかる時間は4日。一方、飛行艇の整備には十分な施設があっても半日はかかる。そして、仮に飛行艇が飛んだとしても、どうやってエレンを止めればいいのかは、誰にもわからない。復活したアニも含めて、5人も巨人化能力者がおり、戦闘力においては最強のチームであるはずなのに、まったく勝ち目が見込めない。  一方、マーレ大陸に上陸する巨人たちを防ぐために世界連合艦隊が世界中の巨大大砲を終結させて一斉射撃するが、巨人たちにはまったく歯が立たない。マーレ兵の1人が巨人化したエレンを指差し「進撃の巨人だ」と言った後で「駆逐してやる」「この世から一匹残らず」というエレンのナレーションが被さる。  主人公のエレンが、幼い時に巨人に母親を食べられた際に決意した「駆逐してやる」という巨人への敵意が、今度は人類全体に向けられている姿を見ると「随分、遠くまで来てしまったなぁ」と思う。

成馬零一

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