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バンクシー最新作とジョージ・フロイドさんの死が意味するもの

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ハフポスト日本版

奴隷貿易によって栄えたイギリスのブリストル出身だといわれる、覆面アーティストのバンクシー。 ブラックユーモアのきいた最新作に込められた、彼の静かな願いとは━━。 『バンクシー 壊れかけた世界に愛を』の著者である美学研究者、吉荒夕記さんがハフポスト日本版に寄稿しました。 -----------------------

地面に置かれた遺影のような写真、百合の花束、何本かの蝋燭。 亡くなった人に捧げた小さな祈りの場だ。 ところがショッキングなことに、その蝋燭の炎が後ろに掲げられた星条旗の一角に燃え移っている。 次の瞬間、何がおこるか容易に目に浮かぶ。 バンクシーの最新作は、5月25日にアメリカ、ミネアポリスで起こったいわゆる「ジョージ・フロイド事件」を題材にしている。 警察による暴力的な取締りの末、通行人たちの目前でフロイドさんが死に追いやられた事件だ。 それを引き金に、社会全体にはびこる人種差別や不平等への怒りの声が急速に広がり、あっという間にバンクシーの拠点イギリスや他国に飛び火した。それは、今も同じような社会問題が世界各地で起こっている事実、何より、多くの人々が共感したからに他ならない。 一連の抗議運動は「ブラック・ライブズ・マタ-(BLM:Black Lives Matter)」と呼ばれ、現代社会を象徴する歴史的出来事となった。 もう一度、バンクシーの絵をみてみよう。 遺影はジョージ・フロイドさんだろうか、他の多くのストリートアーティストたちが外壁に描く絵のように、明白な似顔絵ではない。だが、シルエットにすることでこの問題が一個人の悲劇ではないことを示唆する。 また、一般的に、国旗というシンボルをいれることは、国家のために亡くなった人への慰霊を思わせるわけだが、国の象徴は今にも燃え落ちてしまいそうだ。 アメリカという国家の行く末を予言しているのだろうか、あるいは、社会分断がますます深刻な問題になっていること、国民としての連帯精神が危うくなっていくことを危惧しているのかもしれない。 この作品を発表した時、バンクシーは次のようなコメントを書いている。 「はじめは黙っていたほうがよいかと思った。(中略)でも、これは自分の問題なんだ」

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