認知症の行方不明者が“過去最多” どう救う?…「靴のGPS」で2240人保護、バス運転手の機転も 声かけのコツは『every.特集』
■去年の「認知症の行方不明者」は最多
警察庁によると、認知症の行方不明者の数は統計を取り始めてから11年連続で増加しています。 去年、全国の警察に「認知症の行方不明者」として届け出があったのは過去最多となる、のべ1万9039人。このうち9割以上は無事に保護されましたが、去年末の時点で250人が見つかっていません。
■専門家「誰にとっても身近な問題」
専門家は、認知症による行方不明は誰にとっても身近な問題だと指摘します。 認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子研究部長 「行方不明になる6割近くは、まだ認知症の診断がついていなかったり、支援もまだほとんど必要ないくらい軽い段階で行方不明になっています。自分の身内や知り合い、もしかしたら自分自身も(行方不明に)なってもおかしくありません」
■各自治体が導入「SOSネットワーク」
では、行方不明になった認知症の人をどのように救えばいいのでしょうか? 各地で取り組みが進められています。 横浜市営バスでは去年、認知症の行方不明者を職員が保護しました。そのきっかけとなったのが、全国の自治体で導入が進む「SOSネットワーク」です。 運用は自治体によって異なりますが、行方が分からなくなった認知症の人を早期に保護するための仕組みで、家族らは認知症の人の名前や住所、体の特徴などの情報を事前に自治体に登録。実際に行方が分からなくなった時に自治体や警察に通報し、捜索を依頼します。 すると交通機関や飲食店などに行方不明者の顔写真やその日の服装などの情報が速やかに共有されます。
■服装をとっさに思い出したバス運転手
横浜市営バスのケースでは、どんな経緯だったのでしょうか。同バスの八木建二さんは「(高齢女性が)住宅街の方に歩いていったという情報を頂きまして」と振り返ります。 去年10月の夜9時すぎ。最終のバスに1人で乗ってきたという高齢の女性がいました。席が空いていたにもかかわらず、座らずに立っていたといいます。女性は終点のバス停で降りましたが、あることに気づいた運転手が、営業所に緊急の連絡を入れました。 八木さん 「グリーンのカーディガンでしたか、だいぶ特徴があることで、(運転手が)『多分そうじゃないか』という…」 SOSネットワークで事前に共有されていた行方不明者の服装が「緑色のカーディガン」だったことをとっさに思い出したという運転手。連絡を受けた営業所の職員は、女性が降りたバス停に急行しました。 周辺の住宅街を捜していたところ1人で歩いていた女性を発見し、無事に保護することができました。 八木さん 「見つけられる、発見に至ることもできるんだなという、こういう取り組みは大事だなと本当に思いました」