「私は使い捨てなのか」非正規労働者のため息 提訴した女性が主張する「不合理な待遇差」
パートやアルバイト、派遣など「非正規雇用」で働く人の割合はこの30年で倍増し、5人に2人に上る。都合のいい時間に働ける一方、雇用は不安定で収入も少ない。岸田文雄首相は就任2カ月後の所信表明演説で非正規雇用について触れ、「学び直しや職業訓練を支援し、再就職や、正社員化、ステップアップを強力に進めます」と語った。その約束は果たせるのか。当事者の声は届いているのだろうか。 【写真で振り返る前回の参院選】
ボーナス支給日、アルバイト女性の憂鬱
夏と冬。年に2回訪れるボーナス支給日が憂鬱だった。金額が記された明細書を1人ずつ手渡すのが大阪府内に住む女性(50代)の仕事。「おいしいもの食べに行こう」「どこに旅行しようかな」――。顔をほころばせ、会話を弾ませる正職員を前に、複雑な気持ちになる。女性はフルタイムで働いているのに、アルバイトという理由でボーナスをもらえなかった。 大阪医科大(現・大阪医科薬科大)で女性が「アルバイト秘書」として働き始めたのは2013年だ。18歳で就職した建築会社を結婚・出産を機に20代前半で退職。2人の子どもを育て、約20年間専業主婦をした。子どもが中学に進み、手が離れてきたころ再就職先を探した。 求人のチラシで目に留まったのが、大阪医科大の募集だった。平日は午前8時半から午後4時50分までのフルタイム。2週に1回程度は土曜日に半日出勤が必要だが、家事に支障がないよう夕方には帰宅できる。自宅からの近さや、以前の秘書経験も生かせると考えて応募した。
ある研究室の秘書となり、所属する研究員らのスケジュール管理や経理、備品の発注まであらゆる仕事を任された。研究室の規模が大きく、13年当時、女性が担当する研究員は15人いた。隣の研究室で働く正職員の秘書が担当する6人の2・5倍。研究室を大きくしたい教授の意向で研究員はさらに増え、15年には30人を担当するようになった。 多忙な時、トイレの行き帰りは小走りで時間を短縮した。昼食を食べながら電話対応に追われ、疲労のあまり夕食を作れないこともあった。 それでも、給料は1000円前後の時給だけ。月額15万円程度にしかならなかった。正職員の初任給の基本給と比べても2割ほど低い。ボーナスが出ないため、年額では正職員の55%程度と大差がつく。