コロナ禍で参加者を3倍まで増やしたhontoのオンライン読書会「ペアドク」に潜入
「現実とは何かをうたがってほしい」
ピョートル氏はモルガン・スタンレーを経て、グーグルで日本を含むアジアパシフィックにおける人材育成と組織改革、リーダーシップ開発などを担当。15年に独立した。現在は自身が設立したプロノイア・グループの代表取締役など、複数の会社で取締役を務める連続起業家だ。ベストセラーになった『ニューエリート グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち』(大和書房)など、多くの著書を日本で出版している。講演では、自身の活動の源は「生まれつきの好奇心」だと説明した。 ピョートル氏は1975年、共産主義時代のポーランドの小さな村に生まれた。大自然の中で育ち、8歳の頃から牛飼いの手伝いをしていたことが原体験にある。牛がどうすれば自分のことを味方だと思ってくれるのかなど、自然と触れるなかで本質的なことを学びながら、いずれこの村を出て世界を旅したいと思っていたという。 ところが、ピョートル氏が14歳だった1989年、ポーランドの社会のパラダイムは一変する。共産主義が崩壊し、民主化が実現したものの、人々の暮らしは豊かにならなかった。西側から入ってきた企業は地元企業を再構築し、従業員は減らされ、つぶされた会社もあった。ピョートル氏の兄は職を失い、アルコール依存症になったという。結局兄は、酒に酔って自動車事故に遭い、命を落とした。ピョートル氏は参加者にこう投げかけた。 「われわれがコンセンサスをとれるのは残念ながら一つ。死にます、ということです。それ以外の皆さんが見ているもの、感じている空気、聞こえている声は、それぞれで受け取り方がたぶん違うと思います。個人個人が見ている世界は全然違うということです。 グラスに入ったこれを水だと信じていますか。アルコールかもしれないし、毒が入っているかもしれない。このグラスに入っていると皆さんは水だと認識します。しかし、実際は毒が入っていて、飲んですぐに死ななくても、30分後には死ぬかもしれない。現実とは何かを、皆さんにうたがっていただきたいのです」