余命1年で入院「病院食」のレベルの高さに驚いた 限られた予算で豊富なメニューをそろえる創意工夫
がんとの共存には、こんな小さな遊び心も必要だ。毎日毎日、余命1年とか、終活だとか考えていたら気が変になりそうだ。生存期間がある程度決まってしまっているとしても、その間、自分が納得のいくような生き方をすればいいだけの話。幸い、“人造人間”にはなったものの体は平気で動く。寝たきりではない。ちょっとした旅行や取材はこなすことができそうだ。 この1週間は病院で安静にして体力を蓄え、退院したら井の頭公園の周辺から玉川上水の辺りをのんびりと散策しよう。そのうちもう少し体力が回復すれば、扇山や大菩薩ぐらいは登ることができるかもしれない。今は、そのための準備期間だと考えることにしよう。
病院食について 病院食は法律と「入院時食事療養費制度」によって、1食当たりの予算が決まっている。現在は1食当たり670円で患者負担は90円(一般所得者)。保険給付が180円となっている。1日当たりでは2010円となる。 ある大学病院では患者の状態にフィットした形で提供できるように一般食、治療食あわせて約200種類の食事基準を設けているという。筆者が入院した病院では、最初、朝食がパンだったが、途中からおかゆに変更してもらった。この辺りの融通は利く。
■家庭ではなかなか味わえないメニュー メニューで関心したのは、魚類の料理が充実していることだった。例えば10月、11月のメニューを見ても鮭南部揚げ、サバ塩焼き、アジフライ、かれいムニエル、目鯛塩焼き、カジキソテー、鮭フライ、ムツ照り焼き、アコウダイ塩焼き、さわら照り焼きなどなど。これだけのメニューは家庭ではなかなか味わえない。しかもヘルシーである。 栄養士さんに仕入れの大変さを聞いたところ、「最近は魚だけでなく、あらゆるものが値上がりして困っています」とのことだった。病院食の舞台裏にもドラマがある。
山田 稔 :ジャーナリスト