瓶内で40年以上の熟成を重ねた「フランチャコルタ」の驚くべき味わいとは?
信じているのは、フランチャコルタというテロワールと自身の哲学。
ではなぜこの製法を多くの生産者が採用しないのかというと、「リスクとコスト」の問題に尽きる。ワインは「熟成すればおいしい味わいを得られる」という単純なものではなく、ポテンシャルの低いワインを長期間置けば飲み頃を過ぎてしまう。また、瓶内で熟成させる規定のあるスパークリングワインは、ボトルに詰めた一定数のワインを長期間、同じ環境下で保存しておく必要があり、その期間は出荷もできずただ広大な場所を占領するというデメリットも存在する。それを40年以上にわたって行った生産者は、スパークリングワインの世界広しといえど、カ・デル・ボスコ以外に聞いたことがない。 「6000本のうち、世界への出荷は1000本限定、そのうち日本に90本を割り当てました。フランチャコルタを誰よりも愛してくれている日本のお客様に、ぜひこのワインを味わってほしいと思っています」とザネッラ。
「40年越えのヴィンテージシャンパーニュ、フランチャコルタを味わうことは可能ですが、それは発売後に個人や販売店がセラーで熟成した、いわゆるオールドヴィンテージです。自社で40年以上も熟成して、しかもフレッシュな感覚を保って世界的に発売するというのは初めてだと思います。カ・デル・ボスコでは1989年からボトルのデザインを変更しているのですが、アンナマリア・クレメンティR.S.1980のボトルは40年以上前に使っていた昔のボトルのままです。甘みと酸味のバランスも最高なので、デゴルジュマン後に糖分を一切補わない『ノン・ドザージュ』に仕上げました。このボトルはフランチャコルタというテロワールがいかに長期熟成に耐えられるのか、どれほど高品質のワインを造ってきたのかという証明です」 そう語るザネッラに、この取り組みは今回だけのものなのか?と聞いて見ると、笑顔で「とんでもない!」と返事があった。 「来年にもR.S.シリーズの発売は続ける予定です。81年ヴィンテージはボトルの本数が少ないので出荷の予定はありませんが、次回は2025年末に1982年のヴィンテージを出荷するため、デゴルジュマンを行っています。これからも、R.S.のボトルはフランチャコルタの『可能性』を示す、象徴的なボトルであり続けると思います」 そう語るザネッラの横には、今回初来日となった愛娘にしてブランドアンバサダーに就任したマリア・ザネッラの姿があった。アンナマリア・クレメティとは、創業者マウリツィオ・ザネッラの母の名前。その名前を継いだ孫娘と、彼女が生まれる前からセラーで抜栓の時を待っていたボトルが同じ空間にいる......まさに奇跡のような時間が流れていた。これからもカ・デル・ボスコは、その味わいを未来に紡いでいくのだと確信した。 問い合わせ: フードライナー Tel: 0120-28-6683 https://www.foodliner.co.jp/producer/76
YOSUKE KANAI
フィガロJPカルチャー/グルメ担当、フィガロワインクラブ担当編集者。大学時代、元週刊プレイボーイ編集長で現在はエッセイスト&バーマンの島地勝彦氏の「書生」としてカバン持ちを経験、文化とグルメの洗礼を浴びる。ホテルの配膳のバイト→和牛を扱う飲食店に就職した後、いろいろあって編集部バイトから編集者に。2023年、J.S.A.認定ワインエキスパートを取得。 記事一覧へ https://madamefigaro.jp/author/member/yosuke_kanai.html