「縦置きエンジン」ってナニ? どこが「タテ」なの?
「横or縦」はクランクシャフトの配置で決まる
バイクのエンジンには様々な形式がありますが、大きなジャンル分けのひとつとして「横置きエンジン」と「縦置きエンジン」の2種類があります。しかし現在は、国内メーカーが製造・販売しているバイクはほとんどが「横置きエンジン」です。そして海外メーカーも横置きエンジンが主流ですが、少なからず縦置きエンジンのバイクも存在します。ドイツのBMW Motorradの「R」シリーズは、縦置きエンジンの代表格と言えるでしょう。 【画像】超カッコイイ! これが今ではレアな「縦置きエンジン」を採用したバイクです(24枚)
……ところで、横置きと縦置きは何が違うのでしょうか? それはエンジンの「クランクシャフト」の向き(配置する方向)です。 クランクシャフトは、ガソリンと空気の混合ガスの燃焼によるピストンの上下運動を回転運動に変える部品で、非常に強度が高く重量があります。そのクランクシャフトの回転軸が、車体の前後方向(進行方向)に対して90度に配置するのが「横置きエンジン」で、車体の前後方向(進行方向)と同じ向きに配置するが「縦置きエンジン」になります。
縦置きエンジンのメリットは?
現行バイクでは少数派の縦置きエンジンですが、歴史はけっこう古く、銃器で有名なベルギーのFN社は1910年代に縦置き4気筒エンジンのバイクを作っていました。また有名なところでは、BMWが1923年に初めて生産・販売したバイクが、縦置き水平対向2気筒の「R 32」です。
縦置きエンジンはバイクでは珍しく感じますが、クルマ(4輪車)ではかつて主流だったFR方式と基本的に同じレイアウトと言えます。 縦置きエンジンは後輪の駆動にシャフトドライブを用いる場合が多いです。これはクランクシャフトやトランスミッションの各軸が車体の前後方向と同じ向きなので、設計上で都合が良いからですが、シャフトドライブはチェーンよりも駆動ロスが少なく、ほぼメンテナンスフリーです。BMW「R 32」が登場した当時はチェーンの強度や信頼性も低かったので、大きなメリットと言えます。 また、重いクランクシャフトが回転すると「ジャイロ効果(回転する物体がその場に留まろうとする力)」が発生します。縦置きエンジンはクランクシャフトが車体の前後方向と同じ向きなので、ジャイロ効果によって直進安定性が高まることもメリットです。横置きエンジンの場合もクランクシャフトのジャイロ効果は発生しますが、安定性の効果は縦置きエンジンの方が大きいと言えます。 ただし、重いクランクシャフトが回転すると、回転方向と逆側に「反力」が発生します。とくにスロットルを開けて加速したり、閉じて減速する際に大きな反力が生じます。そのため縦置きエンジンのバイクは右カーブと左カーブでコーナリング時のハンドリングの特性が変わります。これを縦置きエンジン車ならではの個性と捉えるか、端的にハンドリングにおけるデメリットと捉えるかは、ライダーの感性や好みによるところでしょう。 ちなみに1980年代頃までのBMW「R」シリーズは、この反力(トルクリアクション)がけっこう大きかったのですが、近年はエンジン内部の構造の改良により、かなり反力が少なくなっています。