「5W1Hで話す」は絶対ダメ…会話が誰とでも楽しく続く人、あっという間に終了する人の決定的違い
相手との会話を広げるには何を話せばいいか。話し方講師の野口敏さんは「コミュニケーションの神髄は、相手の気持ちを分かち合うことだ。5W1Hでロジカルに話して結論を出そうとすると会話は盛り上がらない」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、野口敏『どんな人とも楽しく会話が続く話し方のルール』(三笠書房)の一部を再編集したものです。 ■5W1Hを使って話を一点に向けると会話が終了する 共感が苦手な人は、会話のイメージを変えてみましょう。うまくいかない人は、おそらく話の内容を論理的に考えているはずです。 たとえば次のように話を展開しているのではありませんか? 【話し手】今度、妻と旅行に行くんだよ 【聞き手】へえ、どこに行くの? 論理的に考えるタイプの人は、「会話とは話を一点に絞っていって結論を出すもの」という頭になっています。 だから「いつ」「どこで」「誰と」「どのように」などと、5W1Hを使って話を一点に向けがちです。するとすぐに答えが出るので、会話はそこで終わってしまいます。 これが会話の広がらない理由なのです。 ここで発想の転換をしてみましょう。 会話を結論へと導くのをやめて、話を広げる方向に向けるのです。 「妻と旅行に行く」と聞いた瞬間、そこで論理的に考えるのではなく、その場面を想像してみます。 旅行と聞けば、まず思い浮かぶのが海や山、飛行機や新幹線、ご馳走や温泉などの映像でしょうか。 すると反射的に「どこに?」と聞いてしまうことになります。
■ポイントは「相手を話の中心に据える」こと ここからが共感力を高める重要なポイントです。 ここで注意したいのは、「旅行=電車、旅館、温泉、ご馳走……」などと、「旅行」そのものに想像の焦点を当てないようにすること。 では、何を想像するのか。それは「相手自身」です。 もちろん、電車、旅館、温泉、ご馳走などを想像するのは結構ですが、焦点を当てるのはあくまで相手自身です。 電車(飛行機)に座る相手、旅館に入りくつろぐ相手、温泉につかる相手、ご馳走を食べる相手……。あなたの想像の中心に、ドンと相手を置きましょう。 この話の流れですと、その隣には奥様も置かないとなりませんね。 すると、いきなり「どこに行くの?」などと質問はしなくなるでしょう。 旅先での二人を想像できたら、その状況を自分のこととして感じてみます。 すると、あなたの口からはどんな感想がもれるでしょうか。 質問よりもまず、その映像から感じる「気持ち」を言葉にすることが重要です。 「いいね♪」 「うらやましい」 「仲がいいね」 これで相手には、あなたが自分のことをしっかり想像してくれていることが伝わります。そして、自分に関心を持ってくれている様子に、相手はとても大きな喜びを感じます。 このように相手の状況(場面)を想像し、さらにその映像、その気持ちを自分が体験しているかのような感覚になることが共感の奥義といえるでしょう。 あなたの口から出てくる言葉は、もうひと事ではなく、自分に起こったことのように豊かな気持ちであふれています。 つまり、相手が描く映像の中にあなたも入り込んで、その気持ちを分かち合う。これがコミュニケーションの神髄となるのです。 ■お互いの頭の中が「話の種」でいっぱいになると 実は聞き手がうまく共感すると、話し手の中でイメージが爆発するような瞬間がやってきます。 【話し手】今度、妻と旅行に行くんだよ 【聞き手】へーっ♪ いいですね。仲がよくてうらやましい 【話し手】いやいや、旅行に行ってもケンカばかりですよ 【聞き手】長いこと一緒にいると、ケンカもしますよね 【話し手】うちのは気が強くて 【聞き手】あ! それは怖いですね こんないい共感をもらえると、話し手の中に映像が次々に浮かんできます。 電車に乗って一分で、もうケンカが始まった。 実は、何でケンカしたのか思い出せない。 妻はおいしい饅頭を食べたら、すぐに機嫌が直る。 このように、話し手には話すことが次々に浮かんできます。 ほとんどの話し手は、それを自分の能力だと思っています。しかし、話し手のイメージをふくらませたのは、実は「聞き手の共感」だったのです。 聞き手の感情豊かな共感で、話し手には受け入れられている安心感が広がります。すると、想像力がどんどん豊かになるのです。 さらに共感をしているほうの聞き手も、想像力がふくらんで聞いてみたいこと、話してみたいことがどんどん湧いてきます。こうして二人は、話したいことと聞きたいことをたくさん浮かべて話をすることになるのです。 これは話を焦らず、共感を行なって、ゆっくりとした展開をつくったから生まれた関係。お互いが話の種をたくさん手に持って話をするのです。話がはずむわけですね。 会話は実は聞き手がリードしている。そういわれる所以がここにあります。 ---------- 共感と脳の活性化の関係 人間は、他人の感情に触れると脳内の神経細胞が急速に発達し、ほかの神経細胞とつながり合うことがわかっています。気持ちの入った共感をもらうと、話し手のイメージがふくらむのは、こういったことが理由のようです。 ----------