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「子供欲しさに偽装結婚」を夢想する32歳ゲイの男性へ|美しい暮らし

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幻冬舎plus

矢吹透 ゲイの方からのお悩みが、ちらほらと寄せられて来ております。 ストレートの読者の方には、今ひとつ、ぴんと来ないお悩みもあるかとは思いますが、突き詰めて考えて行くと、人間の悩みというのは、性的指向のあり方などを超越して、どこか普遍的・根源的な部分を持っている、という気もしています。 それでは、今回のご相談です。 *      *   * 30代、男性、ゲイの会社員です。 「子供のいない人生」を歩むのがたまらなく苦しく、悲しいです。昔から子供のいる人を羨ましく思って生きてきましたが、30代になってからますますその思いが強くなってきました。 甥や姪は本当にすばらしくかわいらしいし、友人知人が「子供のためなら辛いことがあっても頑張れる」というようなことを言うたびに、私にもそんな存在があればいいのにと願わずにはいられません。子供を育てるには、計りしれない苦労があるのでしょうが、それでも家族を作りたいと痛切に感じます。 私が育った家庭環境は良好で、家族仲も良いため、余計に憧れが強いのだと思います。 最近では、嘘をついて結婚したほうが幸せになれるのではないかとさえ思い始めました。もちろん女性を騙していい理由などどこにもありません。それに嘘を吐いたままだと、きっと自分も苦しくなるでしょう。それでもこのまま、子供のいない人生を送るよりかはよほどいいのではないかと考えてしまいます。 身勝手な願望だとは重々承知しているのですが、知り合いのゲイに、偽装結婚をしている人が数人いることも「自分もそうしたい」という気持ちに拍車をかけます。 矢吹さんは、偽装結婚をする人生をどう思われますか? (会社員・32歳・男性)*      *   * ぼくも若い時分に、子供が欲しい、と考えたことがあります。 当時、おつき合いをしていた男性がいて、その人との間に子供を作ることが出来たら、と願いました。 ぼくは本当にその人に夢中だったので、自分の遺伝子と彼の遺伝子とを併せ持ち、生まれて来る子供が欲しい、と切に望みました。 しかし、それは叶わないことでした。   子供が欲しい、とあなたが願う思いは、ぼくのそれとは若干、異なっているような気もします。 自分にすべてを委ねてくれる、小さく愛おしい存在、をあなたは求めているのでしょうか。   ぼくは個人的に、子供というものは作ろうとするものではなく、授かるものなのではないか、と考えています。 例えば、あなたが子供が欲しいから、という理由で女性と偽装結婚をするとします。 必ずしも、子供を授かるとは限りません。世の中には不妊に悩んでいるストレートのカップルがたくさんいます。 そんな状況に陥ったら、あなたはどうしますか? その女性と離婚して、また、別の女性と結婚するのでしょうか。 そもそも、あなたの側に不妊の原因があったとしたら、どうなるのでしょう。   偽装結婚、という言葉にぼくは違和感を覚えます。 「偽装」という言葉には、偽りという文字が入っています。 結婚というのは、契約です。契約条件に偽りがあってはいけません。   ゲイの男性が女性と結婚しているケースは、ままあると思います。おそらく、それぞれのカップルはさまざまな事情を抱え、いろいろな状況・条件の下で、その結婚は成立しているのだとぼくは想像します。 女性の側が、結婚する相手の男性がゲイである、と知っていて、それでも、その人と結婚するというのであれば、ぼくはその選択を尊重したいと考えます。 しかし、男性の側が、自分がゲイであることを隠して、結婚するというのは、詐欺に類する何かに近いことなのではないか、とぼくは感じてしまいます。 しかも、その目的が、子供が欲しいから、ということになると、その男性は、相手の女性を子供を作るための道具として利用しようとしている、というような印象を受けます。 頂いたご相談の文章から察するに、あなたにはもうそんなことは既によくわかっているのでしょう。わかった上で、尚、揺れて治まらない思いが、胸の内にあるのでしょう。   ゲイに生まれる、というのはつらく、困難で、孤独なものです。 あなたはこれまでの人生の中で、そのことを嫌というほど、味わって来たのではないでしょうか。 もし、あなたが偽装結婚をするとしたら、あなたは、ご自分の配偶者や生まれて来る子供たちのことまで、あなた自身のその苦しみに、巻き込んでしまうことになりはしないか、とぼくは危惧します。 あなたは、そのことを、よしとするでしょうか。   純粋に、ただ、子供が育てたいだけなのであれば、世の中には里親や養子縁組などといった制度もあります。 単身者であっても、男性であっても、条件や審査をクリアすれば、里親になれると聞いたことがあります。 そういった選択肢について、考えてみてもいいのかもしれません。   もうひとつ、非常に極端なケースとして、様々な異論や反対意見があることを承知の上で、あえて申し上げれば、ぼく自身が、どうしても子供が欲しいとしたら、偽装結婚という選択をするよりは、海外での代理出産のサービスなどを利用するのではないかと思います。 金銭や契約ですべてを解決し、意図しない他人までを徒に巻き込んでしまうことがないような方法を、ぼくであれば、模索します。   と、ここまで書いて、ぼくはもう一度、あなたからの相談の文章を読み返しました。 あなたはおそらく、子供が欲しい、というよりも、家族が欲しいのかもしれませんね。 あなたは、孤独なのかもしれません。 育った家庭、周囲の友人たち、みな、家族と共にあり、幸せに見える。 自分にもそういった存在があったらいいな、とつい考えてしまう。   そんな気持ちについては、ぼくにもよくわかります。 そして、これを解決する道は、ぼく自身もまだ見出しておりません。 けれど、ぼくは思うのです。 家族があれば、孤独は解決するものなのだろうか、と。 恋人といたら、孤独を感じずに済むのだろうか、と。   一人であって、孤独である、ということには、仕方のないところがあります。 二人(もしくはそれ以上の人数)でいて、その一緒にいる誰かと心を通じ合えなかったとしたら、孤独は更に深いものになるのではないでしょうか。 一人でいるより、二人でいる方が、もっと寂しいことだって、あるのです。   偽装結婚をするかしないか、家族を作るか、子供を作るかどうか、そのことについて最終的に決めるのは、あなたです。 あなたがこうしたい、こうしようと決める将来について、ぼくは尊重したいと考えます。 あなたの人生と、その選択を応援したいと思います。   ひとつだけ、孤独から逃げようとはしないでください。 逃げても逃げても、孤独はどこまでも追いかけて来ます。 そのことさえ、心に留めておいて頂くことが出来たら、あなたにはきっと、正しいあなたの選択が出来るのではないか、とぼくは信じます。*   *   * ぼくに共振して欲しいという方は、ご相談応募フォーム(googleフォームを利用しています)からご応募ください。 LGBTQ+の悩み、青少年の悩み、仕事やキャリアの悩み、恋愛やセックスの悩み、パートナーや夫婦の悩みなど、あなたのどんなお悩みにも、共振いたします。 ■矢吹透 東京生まれ。\n慶應義塾大学在学中に第47回小説現代新人賞(講談社主催)を受賞。\n大学を卒業後、テレビ局に勤務するが、早期退職制度に応募し、退社。\n第二の人生を模索する日々。\n

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