錦織圭 全米出場の最終判断をギリギリまで引き延ばす理由
右足親指にできた嚢胞(のうほう)の摘出手術後、全米オープンの出場が危ぶまれてきた錦織圭が、日本時間23日の朝、滞在するニューヨークのホテルで記者会見を行なった。結論から言うと、出場するかどうかの判断は試合当日まで待つそうだ。痛みは多少残るが、前日に行なった練習では感触が良かったため、あと2日待ってみようということらしい。 本人いわく「少し皮膚を開いて数針縫っただけ」の手術は8月4日に行なわれ、全米オープン開幕に間に合うかどうかまさに微妙なタイミングの「全治3週間」と診断。今週火曜日に抜糸をしたばかりで、それまではランニングやステップ系のトレーニングは全くできていなかったという。これでは、たとえ痛みが消えてコートに立てたとしても期待はできないだろう。 錦織本人がグランドスラムでは常に「ベスト8」を目安としているように、私たちが言う「期待」もそのあたりにある。運よく1回戦くらいは勝てるかもしれないが、それで得られるものが大きいとは思えない。にもかかわらず、ギリギリまで出場にこだわる理由は何か。 まずは、当然だが、やはりこれがグランドスラムであるということ。テニスプレーヤーは年に4回のグランドスラムの舞台に立つために、日々の苛酷なツアーを生きているといってもいい。錦織は今年の全仏オープンでも、脚の付け根のケガで大会直前までろくに練習もできないまま臨んだが、悩んだ末の出場について「グランドスラムでなかったらスキップしたかもしれない。でも、このコートにはやっぱり立ちたいという気持ちが大きい」と説明した。 さらに、そうしたグランドスラムの中でも特に思い入れのある大会が誰しもあり、錦織にとっては全米オープンがそれだ。得意のハードコートで、18歳のときに初出場でベスト16まで進出した大会。第二の故郷であるアメリカの雰囲気もモティベーションが上がる。年に一度のチャンス、そこでテニスをしたい気持ちは簡単にあきらめられない。 同時に、本人の意思だけでなく「出るだけでも出てほしい」という周囲からの強い要望も関係しているはずだ。強要ではないにしろ、それを痛切に感じ、応えたいという思いがあるのだろう。何しろ日本のテニスは錦織に頼りきっている。錦織が背負うものも大きい。