「うまくやってよ」のしわ寄せで長時間労働――トラックドライバーに一晩密着。「働き方改革」は可能か
駐車マスが見つからなかったドライバーが行き着く先は、法律違反であっても「路肩」しかなくなる。走り続けても違反、止まっても違反。休憩を取るたび、彼らは2つのルールの板挟みになる。道路交通法を取るか、改善基準を取るか。伊藤さんはこう言う。 「現場のルールを作るのは、トラックに乗ったことのない人たちなんですよね」
「深夜割引」が引き起こす渋滞と長時間労働
深夜のSAPAがトラックで渋滞する原因になっているのが、高速代を3割引きにするETCの「深夜割引」だ。 今回の伊藤さんの場合、深夜割引で往復約1万円、高速料金が安くなる。長距離輸送がメインの会社や保有車両の多い中規模の運送企業の中には、この割引で月に数百万円を浮かせているところもある。 安い運賃が常態化する運送業界にとって、もはやなくてはならない同制度だが、現場のドライバーからは廃止を求める声が多くあがっている。理由は、同制度による「長時間労働の誘発」。深夜割引の適用条件が、「午前0時から4時の間、1秒でも高速道路内にいること」だからだ。 深夜割引を適用させるため、会社が配送後のドライバーにSAPAなどでの待機を指示する「0時待ち」が発生。会社を目前にしながらも、数時間、高速内で待機するドライバーも少なくない。日をまたいでの帰宅を余儀なくされる深夜割引の存在は、駐車マス不足の一因にもなっている。
路駐で待機せざるを得ず、トイレも食事も行けない
長時間労働を助長する商習慣はほかにもある。例えば、「荷待ち」だ。 トラックは、延着(時間に遅れること)はもちろん、荷主の現場の効率化のために、早着(時間より早く到着すること)も許されていない。つまり、早めに到着しても荷下ろしはおろか、荷主の敷地にも入れない。 荷主から指示される「呼ばれたらすぐに入庫できるところで待機」は、「路上駐車で待機」と同じことになる。ドライバーからは「自分たちだって路上に車を止めたいわけではない」という声が多くあがる。ある40代の大型長距離ドライバーはこう打ち明けた。 「路駐しているといつ警察がやってくるかという不安や、社会に迷惑をかけているストレスが常に付きまとう。何よりトイレにも食事にも行けないのはやっぱりつらい」