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安倍首相の地元で進む一党支配 山口県内の市長選、自民同士で代理戦争の様相

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中国新聞デジタル

 「現市長は観光に重きを置かず市政の足を引っ張っている」。8月20日、自民党山口県議の田中文夫氏は来年3月の萩市長選への立候補を表明した記者会見で藤道健二市長の市政運営を批判した。田中県議は萩市を含む山口3区の衆院議員で河村建夫元官房長官の実弟。2017年の前回選では藤道氏に敗れた現職の野村興児前市長を推薦した自民党の選対本部長を務めた。 【表】第2次安倍政権下に山口県内であった主な自民党員同士の市長選  一方の藤道氏は林芳正元文部科学相(参院山口)の地元後援会の後押しで初当選した。翌18年には林氏の勧めで自民党入りしている。現段階で再選への態度は明らかにしていないが、関係者の多くは自民党員同士の戦いになる可能性が濃厚とみている。  安倍政権下の7年8カ月間、県内では市長選が20度行われ、6人の現職が新人に敗れた。特に最近は周南、萩、長門のほか、出直し選でない美祢の市長選でいずれも自民党員同士の争いか、無所属で勝った新人が後に自民党入りしている。こうした「同士打ち」の端緒を開いたのは安倍首相と深く関わる下関市長選だった。  ▽元秘書を壇上へ  17年1月、安倍晋三首相は地盤の下関市で開いた新春の集いで元秘書で既に市長選への立候補を表明していた前田晋太郎氏を壇上へ招き上げた。現職市長の中尾友昭氏が来賓あいさつで3選への意欲を示した直後だった。  出席した複数の関係者によると、前田氏は、首相の地元にふさわしい下関を目指すことを高らかに宣言。中尾氏をよそに安倍首相と固く握手した。突然のパフォーマンスに約3千人の会場はざわめき「首のすげ替えか」との声も漏れたという。  中尾氏は安倍首相と地盤が重なる林元文科相と昵懇(じっこん)の間柄。過去2回の選挙ではいずれも安倍首相に近い候補を退けていた。  首相の元秘書でくだんの集いに出席した平岡望県議は「壇上への招き入れは秘書だった前田氏を強い現職とフェアに戦わせてやりたいという総理の優しさ。大勢の前で現職をおとしめる意図はなかったと思う」と振り返る。同じく出席者の1人は「足元の市長選で子飼いの候補が立て続けに敗れ焦りもあったのでは」と首相の心情を推し量る。  選挙戦では森友学園問題の渦中にあった昭恵夫人が前田陣営に入り、安倍首相自身も電話作戦でバックアップ。前田氏が3千票余りの差を付けて初当選した。  ▽「内ゲバ」を否定  また、県内政界で自民党支配が進んだきっかけにもやはり安倍首相の存在が浮かび上がる。18年9月の総裁選で3選を目指した安倍首相に対し、地元の支援態勢を盤石にしようと党県連は党籍のない首長にこぞって入党を勧誘。柳居俊学県議会議長は「まちづくりを進める上で地元の安倍総理には大変お世話になる。入党して応援するのは当然のこと」と説明する。その結果、県内の国会議員と知事、市町長の全てのポストを自民党が独占する全国でも例のない政治状況が生まれた。  旧民主党国会議員の秘書という経歴の柳井市の井原健太郎柳井市長もこのときに入党した1人。「道路整備などで国の助けは不可欠。まちの発展のため」と当時を振り返る。  同じ自民党員同士の選挙戦ははた目には「内ゲバ」に見えるが、党県連の友田有幹事長は「切磋琢磨(せっさたくま)し活発に議論することで結果的にまちづくりの質が高まっている」と否定。派閥間で覇を競い合ったかつての自民党のように活力を生んでいるとの見方を示す。  自民党国会議員の代理戦争のような市長選が続く中、県政界では総裁選に出馬経験もある林氏の衆院へのくら替えの臆測が絶えず、各派で腹の探り合いが続く。安倍首相が国政のトップを退いた後について、林派の下関市議は「在職最長の記録を打ち立てた安倍首相の存在感は絶大で目に見えた争いにならないだろう」と重しが取れる状況ではないと話す。

中国新聞社

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