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金融都市・香港は「習近平流の一国二制度」で激変する…「国家安全法」がもたらす危うい未来

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BUSINESS INSIDER JAPAN

香港で再びデモが激化している。中国・北京で5月22日から開かれている日本の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)で、香港の国家分裂活動や破壊行為など治安維持に関する法律「国家安全法」が審議されていることがきっかけだ。28日に評決をとるとされている。 【全画像をみる】金融都市・香港は「習近平流の一国二制度」で激変する…「国家安全法」がもたらす危うい未来 この法律が制定されると、2019年に香港で起こった、香港特別行政区政府(香港政府)や中国政府に対する大規模なデモ、抗議活動を、香港政府がこれまで以上に厳しく取り締まることができる。

「全人代解釈権」で一国二制度を形骸化

香港に対する国家安全法の制定で、最も問題視されているのがそのプロセスだ。中国、香港、台湾に詳しいジャーナリストの野嶋剛氏は、こう指摘する。 「全人代が決めたら何でもできるという。このやり方は、香港返還時には想定されていなかった。理論的には、全人代が中国の最高機関というのは確かだが、香港には一国二制度の中で、法制度の独立がある。本来、法律に絡むことは、香港が決められるはずだった。 中国が全人代でのさまざまな法解釈によって、それを上回る権威を行使する慣例を作りながら、香港の法制度に介入できる理論構築をこの何年間かけて行った 」 香港は1997年中国に返還されるタイミングで、イギリス側の努力によって香港独自の基本法や司法制度を確立した。例えば司法制度では中国とは異なる終審法院、つまり最高裁判所がある。香港特別行政区に関する法律では、本来、この終審法院に解釈権はあるはずだった。 しかし、一国二制度の根幹の一つである法制度に、中国政府は改めて切り込んできたというのだ。 「 全人代で(香港の法律を)決めるとなると、一国二制度の自治権は大きく侵害されます。しかし、これまでも香港が思うように従ってくれないこともあり、香港基本法は全人代が解釈権を持っている、という理論を時間をかけて構築し、既に数回行使しています 」(野嶋氏)

中国が味わった「17年前の失敗」

今回の全人代による、香港の基本法解釈権に介入する問題、国家安全法の制定の動きには伏線がある。 2003年、香港政府は、香港基本法第23条で定められている中国政府に対する反逆行為、扇動行為、国家分裂を及ぼす活動を禁止する内容を、「国家安全法」として制定することを目指していた。 しかし、表現の自由などの権利を脅かすものとして、香港市民から大規模な反対デモにあい、頓挫。そのまま「休眠状態」(5月22日に全人代で、王晨全人代常務委員会副委員長が演説で表現)になっていたという経緯がある。 中国政府にとって、国家安全法の導入は17年ごしの「悲願」ということになる。 「 国家安全法によって、中国を厳しく批判している団体全て活動を禁止され、香港が親中派一色に変えられる可能性がある。香港は、中国であって中国でない、西洋であって西洋でない。そういったところが持ち味だった。これ以上の『大陸化』となると、香港の魅力、香港らしさが大きく損なわれるし、去年のような規模のデモはできなくなるでしょう 」(野嶋氏) 中国政府による、香港の「大陸化」は法制度だけでなく、経済面でも香港の優位性を奪おうとしている。これまで海外の企業にとって香港は、中国でビジネスを行う際のゲート機能として利用されてきた。欧米と同様の価値観、法制度があるからだ。その特異なポジションから、香港は金融面でも国際的な地位を確立している。 中国は香港、マカオ、広東省が一体となった経済圏「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)」構想を打ち出し、香港、マカオ、珠海を結ぶ全長約55キロメートルの巨大な橋を建設した、中国の狙いは、香港の国際的経済都市の地位を薄め、中国の1都市にすること。同時に上海や深圳を国際金融都市にしようと注力している。つまり、香港の価値の低下だ。 今回、国家安全法の制定に関し、中国と激しく対立しているアメリカのトランプ大統領は26日、報道官を通して「国家安全法が制定されれば、香港の国際的な金融センターとしての地位を維持するのは難しい」とコメントしている。

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