精神科医が語る「発達障害で仕事をミスしてばかり…やめるべきか」への納得回答
『ストレスフリー超大全』の著者で精神科医の樺沢紫苑さんは、借金玉さんの著書『発達障害サバイバルガイド』について、「このリアリティ、具体性は当事者の経験あってのもの。精神科医や研究者には、絶対に書けません」と絶賛しています。 今回はYouTubeで実現した2人の対談「発達障害サバイバルライブ!(動画)」の内容を抜粋・編集してお届けします。(撮影/疋田千里) 【この記事の画像を見る】 (視聴者の質問) 「現在、空港で地上係員として働き2年目になります。仕事のミスが多く、自分でも発達障害なのでは?と疑いをもって受診をしたところ、グレーゾーンだとの診断を受けました。現在も仕事のミスは減らず、怒られるたびに落ち込み、家で寝込むことが続いています。今の状況を打開するために、何か方法はないのでしょうか?」(24歳・女性) ● まずは、自分を責めるのをやめよう (二人の回答) 借金玉 これは僕の私見ですが、空港の地上係員って、国内の接客業の中でも一番厳格な部類に入るのでは? 時間がタイトで、利用者も多くてミスが許されない。その環境で「ミスが多い」程度で済んでいるなら、環境を変えればもっと輝けるはず。もし僕だったら飛行機が飛びませんよ(笑)。 樺沢紫苑(以下、樺沢) 質問からうかがえるのは、自責の念です。まじめな方ほどこの傾向が強いのですが、残念ながら自分を責めてもあまりいい結果は得られません。グレーゾーンという診断をマイナスに捉えず、自分の特性を知る契機にしてほしいですね。 借金玉 僕もそう思います。「求められる水準が低いところを探す」という転職の方法もあって、この方が今ほど規律の強くない職場に行けば、すぐに「あなたはすごい!」という評価を受けられると思います。 樺沢 なるほど、ハードルを自ら下げるやり方はいいですね。高すぎる目標を掲げてしまう人が多いですが、その逆を行くとラクになります。 借金玉さんは、「適職=向いている仕事」についてはどうお考えですか? 例えばASDだと、コミュニケーションが苦手だから、例えばプログラマだとか一人でできる仕事や事務作業が得意だといわれますよね。ADHDなら集中してのめり込めるので、クリエイティブな仕事がいいとか。 借金玉「発達障害の適職は……」と一括りにするのではなく、まずは何より自分の発達障害の傾向を把握することが欠かせないかなと。「発達障害の人はクリエイターが向いている」と言われて、ふざけんな!と思っている人も多いと思います(笑)。 僕自身についていうと、とにかく事務的なミスをすることが多いのですが、「ミスが許される仕事(ミスより成果が優先される仕事)」なら大丈夫だという自覚があります。でも、それだって金融機関での膨大なミスを経験してはじめて分かったんです。これは、やってみて失敗しない限り気づけない。得意なことを探すというより、「絶対に向いていないものを避ける」という考え方で今の仕事(ライターと、不動産営業)に行き着きました。 ● 向いている仕事は友人に聞く 樺沢 失敗したことを自己分析の材料にするというのは面白いですね。 私も適職を探すには、「短所克服」より「長所進展」が大事だと考えています。仮に各々が持つ能力を百点満点で評価するとして、私には、発達障害の方の多くが苦手ジャンルの40点くらいの能力を70点にしようと苦悩しているように感じられます。でも、生きて行くうえでは40点できれば十分ではないでしょうか。 例えばゲームの世界だと、戦闘力や体力が極端に優れている持つキャラクターが評価されるけど、現実において人々が目指すのは全部50点の「超平均」だったりする。さらに、日本ではゼネラリストが評価される傾向にあります。でも、成功する人や活躍する人にはやはりそれぞれエッジの立った能力があります。頑張って平均を目指すより、100点を取れる可能性を持つ長所を伸ばそう。それが私の考え方ですね。 借金玉「長所がない」という人も良くいるけど、そういう場合は「自分が好きなこと」を考えてみてほしいですね。嫌いなことは、絶対に長所になりませんから。 樺沢 自分の長所は自分では分からないことがほとんどです。ほかの人の意見を聞いてみるのもいいと思いますよ。 自分のことを客観視するのは難しいけど、他人のことなら簡単ですからね(笑)。 借金玉 はい。「褒め合える友達」は持ったほうがいいですね。人のいいところを指摘してくれる友人を持ちましょう。そういう相手になら、自分も遠慮会釈なくモノが言えて、きっとお互いにとって良い循環が生まれるはずです。特に発達障害持ちの自己認知は、歪んでしまっていることも多いので、客観的な視点を持つことは大事だと思います。
借金玉