ライブ配信に必要な3つの要素「継続」「テンポ感」「多彩さ」
20年の国内音楽シーンの動向を振り返えると、「ライブ配信の年だった」と言ってよいだろう。ここ数年で音楽ビジネスの中心となったライブ・エンタテインメントが、全世界を襲ったパンデミックによって自粛せざるを得なくなり、多くのアーティストが一斉にライブ配信へと舵を切った。そしてその内容は、リアルなライブ以上に、アーティストの個性を色濃く反映したものとなった。 【表】「ライブ・エンタテインメント市場規模」20年は前年の3割以下に減少
■試行錯誤の末にたどり着いたライブ配信の3つのタイプ
春先は、ある意味で「ライブの代わり」として注目されたライブ配信であったが、それはすぐに「ライブとは別の、新しいオンライン・コンテンツ」という認識に変わったことで、配信する側も、視聴者側も、さらにはプラットホーム側も、全員が手探りの状況の中、さまざまなスタイルのライブ配信が試みられた。そうして今、現状で考え得る試行錯誤が一巡し、ライブ配信のアプローチもいくつかのタイプに集約されてきたと言える。それを大きく3つに分類すると、「映画タイプ」、「テレビ番組タイプ」、そして「深夜ラジオ番組タイプ」となる。 「映画タイプ」とは、年に一度できるかできないかというレベルの規模の大きなライブ配信。多様な趣向を凝らしたスペシャルな演出はもとより、映像面やサウンド面にとことんこだわるなど、映像作品に匹敵する高いクオリティを追求したオンライン・コンテンツだ。この場合、配信でしか実現できない演出・表現を突き詰められる一方で、必然的にコストや制作期間が必要となり、視聴チケットも高価となる傾向がある。 対して「テレビ番組タイプ」は、例えば5回の配信でワンセットという形式だったり、期間を設定して月1回の配信を行ったりと、テレビのレギュラー番組のように定期的に行われるライブ配信のこと。コンスタントに視聴者とコミュニケーションを取りつつ、規模感よりも、選曲やシチュエーションにこだわり、回ごとにテーマを掲げることで特別感をもたせるというアプローチ。アーティストが、自身の番組、あるいはメディアを持つようなイメージだ。 このテレビ番組タイプを、さらにライトなものにしたものが「深夜ラジオ番組タイプ」だ。内容をライブ(音楽)に限定せず、トークやバラエティ色のあるコンテンツも交えながら、週1回など配信頻度を高めるという方法だ。現状では、アーティストが個人的に行っているインスタライブなどがこれに近いと言えよう。