「環境破壊の温床」といわれるゴルフ場に変化? 意外と知られていない「残地森林比率」や「農薬の進化」とは
かつては主に農薬使用で批判されていた
日本には現在、2100以上のゴルフ場がありますが、それらを全て合わせると27万ヘクタールに上るとされ、住宅地の総面積や佐賀県の面積をも上回るそうです。 【写真】これがコース管理のプロが教える「正しい目土の仕方」「ボールマークの直し方」です 一見すると、芝が広がって自然にあふれているように思えるゴルフ場ですが、「環境を破壊している」と批判されることもしばしばあります。 では、ゴルフ場が自然環境に悪い施設と言われてしまうのは、どうしてなのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)に聞きました。
「最近こそ『ゴルフ場は環境破壊につながる』という論争は下火になりつつありますが、20世紀も終わりに差し掛かった頃は、各地でゴルフ場を批判的に捉える『ネガティブキャンペーン』が広まっていました」 「ちょうどその時は、バブル経済によってゴルフ場の数が拡大傾向にあった年代と一致しますが、『人体や生態系に悪影響のある化学肥料や農薬を使っている』というものが主な論点とされていました」 「18ホールのゴルフ場ともなると、東京ドーム100個分に匹敵するほどの非常に広大な土地となるため、スタッフが全ての芝の健康状態をくまなく管理するのは困難を極めます。そのため、作業の効率化を図る目的で農薬の散布を行っているところもありましたが、雨が降ると地中にしみこんだ農薬が局地的に集中して近隣の農作物に被害が出たり、河川の下流域で行われていた養殖業にもダメージを与えていたりといった問題を引き起こしていました」 「しかし、農薬も進化を遂げて化学的な物質がほとんど含まれていないものが使用されていたり、そもそも経費削減の一環で農薬の使用量が減ったりしているので、現在ではゴルフ場の環境破壊を訴える運動もほぼ絶滅したと言えるのです」 神奈川県が実施した調査によると、2022年に県内のゴルフ場で使用された農薬の総量は成分換算値で30581キログラムという結果になりました。これは、調査が始まった1989年に算出された60060キログラムの50.9%であり、30年強の間で農薬の使用量はほぼ半減したことが分かります。 かつては闇雲に撒かれていた農薬ですが、成分の改善だけでなく利用に関する知見も広まったことで、今では必要最低限の量で済むようになったと言えるでしょう。