バンダイナムコ、景気悪化でも中国に照準 「ガンダム」など日本アニメ空前のブームに
中国では景気低迷に加えて、EC(電子商取引)による買い物が一般的になり、実店舗は集客に苦戦している。「不景気で節約するけれど、『推し活』にはお金を使う」(上海在住の20代女性)との声は多く、日本のIPに熱視線が注がれている。 空前の日本IPブームの火付け役となったのが、上海有数の繁華街、南京東路にある商業施設「百聯ZX創趣場」だ。従来は通常の商業施設だったが、23年1月にアニメやゲームを中心とする専門モールとして生まれ変わった。 百聯ZX創趣場は全7フロアに、約40のアニメ関連ショップが軒を連ねている。「アニメイト」や「東映アニメーション」「アニプレックス」など日系のアニメ関連ショップが数多く店舗を構えており、多くの店舗で日本のアニメやキャラクターグッズを取り扱っている。まさに日本アニメの「聖地」と呼ばれる存在だ。実際、11月下旬の休日に足を踏み入れると、若者を中心に身動きが取りづらいほど多くの客でにぎわっていた。 ●中国地場のIPも台頭 中国のアニメ関連団体などの調査によると、中国の23年におけるアニメ関連産業の市場規模は3000億元(約6兆円)を突破したという。今後も右肩上がりに成長を遂げ、29年には4700億元にまで拡大するとの予測もある。 バンダイナムコHDの中国を含めたアジア地域での売上高は、24年3月期に973億円と過去最高を記録した。バンダイナムコエンターテインメント上海の諸麦達也董事は「日本のIPは年々中国で受け入れられており、取り巻く環境は力強くなっている」と、中国での事業拡大に期待を寄せる。 もっとも、中国で人気を集めるのは日本のIPだけではない。中国発のアニメやゲームなどのIPも増えつつある。中国の自動車大手、比亜迪(BYD)は10月、中国発オンラインゲーム「黒神話:悟空」を手掛けるゲームサイエンスとの戦略提携を発表した。11月に広東省広州市で開催された「広州国際汽車展覧会(広州モーターショー)」のBYDブースでは「悟空」を活用した大々的なプロモーションが実施された。 不景気下の中国で大きな注目を集めるアニメなどの「2次元産業」だが中国企業も猛追し始めている。バンダイナムコでは中国IPを活用した商品開発など仲間づくりも進める。日本の強みを生かし、地元企業との競争に打ち勝つためには迅速な事業展開が求められるのは間違いなさそうだ。
佐伯 真也