会計士、コンサル、税理士を襲う荒波、コロナ禍やデジタル化で環境激変
会計士、コンサル、税理士――。彼らには企業の会計や税務、戦略を陰で支える裏方という共通点がある。ダイヤモンド編集部は今回、四大会計事務所の会計士や独立系コンサル、街の税理士ら総勢100人近くを取材。『週刊ダイヤモンド』2月13日号の第1特集「序列激変!会計士・コンサル・税理士」は、コロナ禍やデジタル化といった荒波にもまれながら、変貌する彼らの実像を浮き彫りにする。(ダイヤモンド編集部 重石岳史) ● カネボウ、オリンパス、東芝… 繰り返される不正会計の黒歴史 「昔はどの監査法人にも“大先生”がいて、その先生と企業の馴れ合いのような雰囲気で監査をしていた。今は当局の締め付けも厳しくなり、そんななあなあな空気はない」 そう語るのは、大手監査法人を約20年前に退所し、都内で小さな会計事務所と税理士法人を営む男性だ。男性の事務所にも金融庁や日本公認会計士協会の検査担当者が定期的に来訪し、ヒアリングや監査調書のチェックなどが行われるという。 男性の肌感覚では、「締め付け」が厳しくなったのは、2005年に発覚したカネボウの粉飾決算事件以降だ。 2000億円を超える粉飾が明るみとなり、監査を担当した会計士の逮捕者を出した。その後も11年にオリンパス、15年に東芝と世間を揺るがす大企業の不正会計は繰り返される。 男性は「事件が起きるたびに締め付けは増している。会計監査に対する世間の目が厳しくなり、会計士が求められる役割も変わったということだろう」と語る。 男性がかつて勤めていた大手監査法人は、今は「ビッグ4」と呼ばれる四大会計事務所の一つとなった。四大の組織内部も、おそらく男性が知る約20年前とは様変わりしている。
四大は国際ビッグ4と提携し、デロイトトーマツ、KPMGジャパン、EYジャパン、PwCジャパンの各グループは、監査法人だけでなく、税理士法人やコンサルティング会社、M&Aアドバイザリー会社、弁護士法人などを抱える巨大ファームに変貌した。 いずれも監査以外のコンサルなど非監査業務の存在感が増している。デロイトトーマツグループの永田高士CEO(最高経営責任者)は「監査と非監査は、対立軸ではない。監査では非監査の知識や能力が必要であり、非監査でも監査会計の理解は必要」と話す。日本公認会計士協会の手塚正彦会長も「(監査と非監査を)規制で切り離すよりも、いかにうまく使うかを考えた方が絶対に社会のプラスになる」との立場だ。 一方で監査と非監査は、利益相反の関係に陥る危険性をはらむ。クライアントの企業に対し、会計事務所が監査とコンサルのサービスを同時提供した場合、監査法人側に財務チェックを甘くするインセンティブが働いてしまうからだ。 実際、四大内部にも非監査の拡大に危機感を持つ幹部は多い。KPMGジャパンの森俊哉チェアマンは「たがが一つでも外れれば、売り上げ重視になってしまう。売り上げ重視になった途端、監査法人の理念と懸け離れてしまう。グループ内で同じビッグ4の冠は付けているけど、同床異夢になる」と話す。 四大は今、望むと望まざるとにかかわらず、そんな危うい線上に立ちながら膨張を続けているのだ。 激変の波に晒されているのは、会計士だけではない。コンサルや税理士も同様だ。 成長を追い求めるコンサルは、四大系だけでなく、アクセンチュアなど外資系コンサルファームと時代の先を読んだ激戦を繰り広げる。税理士はコロナ禍、デジタル化、人材難など環境変化の荒波にもまれながら、熾烈な生き残り競争に直面している。
ダイヤモンド編集部/重石岳史