【ボクシング】これが井上拓真のボクシングだ! 強打の王者・栗原をコントロールし、OPBF王座獲得
14日、東京・後楽園ホールで2021年最初のボクシング興行がスタート。注目の東洋太平洋バンタム級タイトルマッチ12回戦は、元WBC世界同級暫定王者の井上拓真(25歳=大橋)が、王者・栗原慶太(28歳=一力)を、ほぼ完封。9回2分25秒負傷判定勝ち(90対81、89対82、89対82)し、スーパーフライ級に続きOPBF王座2階級制覇を果たした。 写真=強打の王者・栗原をコントロールした井上拓真 写真4点
まさにマタドールと闘牛の戦いだった。右ストレートに一撃必殺の威力を備える栗原が、雰囲気を醸し出したのは初回だけ。2回からは、井上のスピードと防御スキル、カウンターが冴え渡った。一見、栗原がプレスを強めて前に出ているように見えるが、主導権を握り続けるのは井上。敢えて引き寄せながら、栗原に右を打たせる。これをひらりひらりとかわしながら、得意の左フックをカウンター。栗原が躊躇すれば、右から左の逆ワンツーで飛び込み、インサイドから右アッパーカットをショートで突き上げた。
「絶対に冷静さを失わない」。それを固く誓って臨んだ。大晦日、4階級制覇を狙ったものの、井岡一翔(Ambition)に翻弄された田中恒成(畑中)の姿を胸に刻んだ。田中はアマチュア時代からのライバルにして拳友。その田中が、KOを狙うあまり強引に攻めすぎてコントロールされ、冷静さを失っていった。逆に、基本に忠実なスタイルを徹底し、冷静さを保ち続けた井岡の戦いぶりに思うところもあっただろう。 「相手の土俵に乗らず、徹底的に自分のボクシングをする」。6回、逆に栗原が引きながら井上を誘ったが、決して自分の距離を崩さずに、ジャブをビシビシとヒットさせていった。 栗原は初回にバッティングで左目上をカット。回を追うごとに出血も酷くなり、ドクターチェックも再三。この影響ももちろんあっただろうが、前に出ていても、ハードヒットを奪えない。だからさらに振りが大きくなる。かわされてカウンターを合わされる。さらに焦る……。その沼から抜け出すことができなかった。