昭和世代には「懐かしい」ヘチマ、見直される“良さ” 静岡県浜松市の市民団体が復活・普及に奮闘中
使い方にもよるが、ヘチマスポンジは一般的に長持ちする。排水性が高いため植木鉢の底に敷くこともでき、最後は土の中に埋められる。 他方、プラスチック製スポンジは、使えなくなったら即廃棄物になる。またマイクロプラスチックは下水道処理のフィルターを通しても、一部は河川を通じて海洋に漏れ出てしまう恐れがある。このため、海洋生物やそれを食べる人への健康の影響が懸念されている。 五明さんはまた、夏の日よけ対策が「重要度を増している」と指摘する。理由として、住宅性能が向上する中「一旦、家の中に熱がこもると抜けにくくなるため」だという。
そのうえで、冷房費削減効果がある住宅の外側から日よけをする方法の1つとして、「緑のカーテン」が有効だと話す。最近はゴーヤを使って実践している家庭があるが、スポンジも作れるヘチマも一緒に育ててほしい、と語る。 ■果たして農家はヘチマを作るのか 一方、市内ではプロジェクトを応援するが「果たして農家が作るだろうか」との声もある。 浜松市は市町村別で全国6位の農業産出額(農水省)を誇る地域。農家が、市場規模が小さく収益性に不安があるヘチマ栽培にすぐに乗り出すとは考えにくい。
しかし五明さんは、まずは多くの人がヘチマの良さに気づき使い始める「仕掛け」を作ることを目指している。「価値を感じる人が増えれば、農家にも着目してもらえるのでは」と期待する。 かつて浜松のヘチマ産業の発展に貢献した織田利三郎という歴史的人物がいた。織田氏は、ヘチマなどの農産物の輸出振興をしながら、国際博覧会においてヘチマで作った「ゾウ」を展示し、世界一の品種と認められた。市内には彼の功績を称えるために建てられた「顕彰碑」(けんしょうひ)がある。
五明さんは「浜松へちまプロジェクト」とは別に、市の「創造都市」推進事業にも応募し、6月下旬に補助金対象事業として採択された。事業名は「夢みるクジラは、120年後のそらを泳いでいた」。 プラスチックによる海洋汚染が問題となっている中、海洋生態系の頂点にいるクジラのオブジェをヘチマで製作し、展示会場の天井から吊り下げる。会場では浜松のヘチマの歴史がわかる写真や資料なども展示する計画だ。 ■「近所のスーパーでヘチマが買えるように」