昭和世代には「懐かしい」ヘチマ、見直される“良さ” 静岡県浜松市の市民団体が復活・普及に奮闘中
当初はヘチマの栽培者として30団体と個人100人、ヘチマスポンジの使用者として300人を集めることを目標とした。それが地元の新聞やテレビで紹介されると反響があり、立ち上げからわずか3カ月ほどですべての目標をクリアした。特に団体部門には70団体から応募があり、目標の2倍超に達している。 ■目を丸くする子どもたち 団体の中には地元の幼稚園や小学校などが環境学習などで活用している事例もある。五明さんは、学校から声が掛かると、生徒たちに話をしに行く。
地元でもヘチマの存在を知る子どもは少数で、硬い乾燥したヘチマを手に取ると、「先ずはブンブン振り回す」という。そして、水に浸し柔らかく変化すると目を丸くするという。 また、ヘチマを栽培しないが、スポンジを使う「つかい隊」には、市在住のプロサーファー三浦涼さんも参加している。三浦さんはブログの中で、プロジェクトに出会うまで、ヘチマからスポンジができるとは知らなかったと述べている。 ヘチマスポンジを使うことでマイクロプラスチックの削減に役立つと知り、「(ゴミを減らす)僕たちの海での取り組みとつながると思いました」と語る。
■ヘチマには「楽しいことしかない」 ヘチマ生産は現在、沖縄や九州など一部地域に限られている。鹿児島では郷土料理として「ヘチマ汁」がある。全国的に収穫量が少ないため統計数値がない「マイナーな」農作物として位置付けられている。 広辞苑によるとヘチマには、「つまらぬもののたとえ」という意味もある。また、ぶらぶらして役に立たない男性を罵る言葉として「へちま野郎」といった言葉も載っている。もっとも、こうした言葉は最近ではあまり聞かれない。
しかし、五明さんにとって、「ヘチマには楽しいことしかない」と、ヘチマの魅力を話しだすと止まらない。毎日3度の食事後の食器洗いにヘチマスポンジを使うことは極めて日常的であり、「無理なく満足感を得ながら、環境保全に働きかけられる」と話す。 団体の副代表を務め市内で菜食カフェを経営する40代の石田渚さんは、「皿や鍋を洗うスポンジにヘチマを使ってみたら、洗剤を使う量も少なくて済むし、耐久性も気にならない。ヘチマでいいんじゃない? と思った」と魅力を語る。