ルーマニア発のファッションとは? 現地取材で感じた新たな“若手発掘の場”への期待
東欧諸国に店を構えるコンセプトストアからも協力を得て、各店に同イベントに参加した学生や若手デザイナーの商品を陳列するスペースも設けています。会場には、そのコンセプトストアのバイヤーと、西欧のプレス関係者も招待し、誰もが潜在的な可能を秘めたスターデザイナーを発掘しようと、ランウエイに熱い眼差しを向けていました。
バラエティーに富んだ会場
同イベントを取材するのは、昨年に続き2回目。スケジュールは、午後2時に各日最初のショーが開始し、以降は2時間おきにショーがあり、全て終了するのが午後9時頃。合同ショーのため1プログラムに登場するルック数が多く、30分程度と長めです。とはいえ、学生によって全く世界観が異なるためバラエティーに富んでおり、あっという間に終わってしまう感覚でした。また、会場選びがとてもユニークなのも特徴です。メイン会場はスポンサーであるショッピングモール、ポロメナーダ・シビウ(Promenada Sibiu)の倉庫やスタッフ通用口で、その他にもシビウ空港の手荷物受取所、ルーマニアの伝統のお菓子を製造するボルミール(Boromir)の工場、美術館の展示会場、屋内カート場や市外の広大な公園もランウエイとなりました。
肝心の合同ショーの内容は、学生によってクオリティーにはかなり差があるものの、オリジナリティーという点では見応えがありました。彼らのスタイルの傾向をざっくりと表現するなら、明るい色彩に複雑な幾何学模様、シルエットはかなりのボリューム。映画館内で開かれた、伝統衣装を制作する職人のドキュメンタリー映画の上映会とプレゼンテーションでも、民族衣装は男女問わずパフスリーブにバルーンスカート、キャットパンツやプリーツスカートとふんわりしたシルエットが基本です。宗教的なモチーフに由来する植物を抽象化した幾何学模様を繊細な刺しゅうで施していました。現代ではグローバル化によって多様なスタイルを形成しているとはいえ、服飾のルーツは民族衣装にあり、フォークロアなムードです。シュルレアリスムの奇妙な世界観だったり、異様なシルエットを描くコンテンポラリーアートのアプローチ、テクノロジーを駆使したフューチャリスティックなムードだったりと装飾主義がほとんどで、ミニマリズムなルックが一つとして見当たらなかった点も興味深かったです。