「息子、あれが息子」11年前に沿道で喜んだ父は末期がん…防府読売マラソンで「再び元気づけたい」
山口県防府市で12月1日に開催される第55回防府読売マラソン大会(防府市、読売新聞社、KRY山口放送など主催)に、末期がんで闘病中の父を励まそうと、福岡県志免町のファイナンシャルプランナー、内山貴博さん(46)が出場する。11年前、親子の絆を深めるために防府読売に初挑戦した内山さんは、「自分が走る姿で再び父を元気づけたい」と力走を誓う。(谷口善祐) 【写真】2017年12月の防府読売マラソン大会に出場した後、広さん(右)と実家で写真に納まる内山さん(内山さん提供)
初出場「立ち直るきっかけに」
防府市で育った内山さんが初めて防府読売に出場したのは2013年の第44回大会。きっかけは父・広さん(73)だった。
広さんは元自衛官で、約20年前に退官した。その後、再就職したものの仕事がうまくいかず、首や腰の手術も重なって心身ともに疲弊していた。内山さんが同市に帰省して食卓を囲んでも、広さんとはけんかばかり。「家族に不満をぶつけることもあり、昔のような気さくな父ではなくなっていた」
一家の大黒柱として立ち直ってほしい――。自分に何ができるのか思案していた12年の年末、広さんがかつて10キロを38分台で走ったと自慢していたのを思い出した。「防府読売で頑張る姿を見せれば気持ちも変わるはずだ」とひらめいた。
ただ、マラソン4時間以内、ハーフマラソン1時間46分以内という参加資格(当時)を得るには、翌年春に島根県で行われるハーフマラソンがラストチャンスだった。本格的に競技に取り組んだことがなかった内山さんは約4か月間、仕事後に走り込み、大会では1時間32分でゴールした。
緑色のジャンパーでハイタッチ
準備期間が短い中で防府読売にこだわったのは、第44回大会が行われた13年12月15日が広さんの誕生日だったこともあった。走り込みを続け、マラソンの雑誌で靴の選び方や体調の整え方も独学。沿道で広さんに着てもらおうと、目立つ緑色のジャンパーを贈った。
大会当日は、見慣れた風景を楽しみながら駆け抜けた。そして、実家に近い25キロ地点。広さんが見ず知らずの人たちに「息子、あれが息子」と声をかけ、はしゃぐ姿が見えた。少しスピードを上げ、手を伸ばした広さんとハイタッチ。折り返した後の33キロ地点でも親子で手を重ねた。3時間31分で完走を果たした。