1980年代にリトラクタブルヘッドランプで話題になった日本車5選
1980年代に数多く登場したリトラクタブルヘッドランプ採用車のなかでも、印象的だった5台を小川フミオがセレクトした。 【写真を見る】トレノやアコードなどリトラクタブルヘッドランプ採用車たち(52枚)
格納式(リトラクタブル)ヘッドランプは、過去のものになってしまった。でも、いま見ても、フロントノーズが精悍に見えるし、ライトを格納したときと、ポップアップしたときとで、クルマのイメージも変わるので、なかなか楽しい。 1960~1970年代の日本車のなかで、リトラクタブルヘッドライトを採用していたのは、トヨタ「2000GT」(1967年)と、マツダ「RX-7」(1978年)ぐらいのものだった。80年代になって、スポーツクーペにまで採用車種が拡大。1990年代を通して、多くの日本車で、スポーティな雰囲気を作るのに使われた。 ただし、マツダの3代目「コスモ」(1981年)やホンダ「ビガー」(1985年)の、4ドアセダンでありながらリトラクタブルヘッドライトというスタイルには、やや無理やり感あり。正直いって審美性も高くなかった。トヨタや日産とはちがう、独自のキャラクターを作ろうとした努力の結果だろうが。 リトラクタブルヘッドライトが登場したのは、北米市場で、ヘッドライトの高さ規制があったためだ。くわえて、露出した円形か角形の米国規格型のライト以外は、1984年までは禁止されていたので、その点でも、ノーズを下げてスポーティな雰囲気を作りたい場合は、ポップアップ式ヘッドライトを採用するのが”逃げ道”だった。 いっぽうで、2000年代に入ったとたん、いっきに採用車種がなくなったのは、ひとつには北米でのライト位置の最低地上高規制が緩和されたことが大きい。もうひとつは、安全性のため。歩行者保護や前面衝突安全性の確保といった安全要件を満たすには、ノーズにある程度の上下幅をもたせることが必要となった。さらに燃費に効く空力の面では、ポップアップ式ヘッドライトは展開時に空気抵抗が増大してしまい、不利なのだ。 こうして、リトラクタブルヘッドライトは、1980年代と1990年代のクルマをデザイン的に象徴する存在になった。だからか、いまみると、とても懐かしい。加えて、低くかまえたノーズをもつウェッジシェイプ(クサビ型)のプロファイル(サイドビュー)も、クルマ本来のカッコよさがあり、色褪せて見えないのだ。