しろくまピース25歳、高齢になっても「いつまでも愛らしい恋人です」…見守り続ける飼育員
人工哺育のホッキョクグマとして国内最年長のピース(雌)が12月2日、愛媛県立とべ動物園(砥部町)で25歳の誕生日を迎える。母親との別離といった困難を乗り越え、来園者に愛されてきた。生まれた日から担当してきた飼育員の高市敦広さん(54)は高齢期に差しかかったピースを優しく見守る。(松山支局 黒岩美緒) 【写真】まるで「歩くぬいぐるみ」…生後2か月過ぎのピース
「ピーちゃん」。高市さんが呼びかけると、ピースは獣舎の奥で起き上がり、大きな体を揺らして近づいてきた。高市さんは「我が子であり、様々なことを教えてくれる母であり、いつまでも愛らしい恋人です」とガラス越しに目を細めた。
ピースは1999年、体重680グラム、体長約25センチで誕生。双子だったが、もう1頭は母親のかみ傷が原因で死んだ。同園はピースを離れさせ、人工哺育に切り替えることを決めた。
同園によると、ホッキョクグマは免疫や抵抗力が弱く、人工哺育は難しいとされる。ホッキョクグマの子育ては本来、母親がつきっきりで行う。ピースの担当となった高市さんは、日中は動物園、夜は自宅で、24時間世話をすることにした。
妻、子ども2人と住んでいた団地の1部屋をピース専用とし、共同生活がスタート。細菌感染に弱いため、子どもたちには「触ったらダメ」と約束させ、自身も消毒を徹底した。夜鳴きを聞いた階下の住人から、「もう一人、お子さんが増えたのかと思った」と言われたという笑い話もある。
生後105日目、ピースは無事に一般公開を迎え、ぬいぐるみのような真っ白く愛らしい見た目でたちまち人気者になった。110日目に初めて、高市さん宅ではなく夜も獣舎で過ごした。環境に慣れず、高市さんが帰宅すると夜通し鳴き続け、声がかれるほどだったという。
ホッキョクグマの平均寿命は25~30歳。高齢になり、ピースの体重は100キロ近く減って約250キロになった。機嫌が良い時、唇を「チュッチュ」と鳴らす癖は、幼い頃のままだ。
今年は12月7日に誕生会を開き、好物のリンゴ入りの氷のケーキで祝う。高市さんは「全国のファンに恩返しするためにも、ピースを幸せにすることが私の使命です」とほほえんだ。