コロナ禍で我慢が続く子どもたちに夏の思い出を。行政と大学が開催した自宅でできる実験教室
今年4月から9月まで、日本各地で断続的に続いた新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言とまん延防止等重点措置。さまざまな団体が主催するイベントが、感染拡大防止に伴う開催条件の制限から、中止や規模の縮小をせざるを得ない状況も頻繁に起こり、話題になりました。 そうした中で子どもたちの成長にとって大切な夏休みに、思い出づくりや発見のある学び体験をしてもらおうと、東京・清瀬市(清瀬市教育員会)と明治薬科大学が主催した、薬学入門の体験学習イベントをご紹介します。
医療の街・清瀬市と明治薬科大学が協力し、薬学と親しむ学びを提供
『清瀬子ども大学 薬学の部~明薬ラボへようこそ~』として開催されたこのイベントは、東京・清瀬市(清瀬市教育員会)が、子どもたちに医療の分野に関心を高めてもらおうと発案し、明治薬科大学がこれに協力し、開催されました。 しかし、対面で開催しづらい状況下であることから、動画配信によって自宅で講義を受け、子どもたちが自分の力で実験し、身体のなかの酵素の働きを学ぶプログラムを企画しました。 「清瀬子ども大学」は他にも、「理科の部」や「音楽の部」「福祉の部」など、子どもを対象とした学びのイベントを多数企画しています。 今回「薬学の部」が立ち上がった背景を明治薬科大学の担当者に聞きました。 「本学がある清瀬市は、“医療の街”として近隣地域に知られています。さらに本学は研究成果の社会還元を目的として、小・中学生を対象に『ひらめき☆ときめきサイエンス』を開催し、実験の意義と楽しさを伝える活動を実施してきた実績があります。 今この時期に子どもたちに何か楽しんで学ぶ機会を提供できないかという思いと、清瀬市教育委員会の、それぞれの子どもの『興味・関心』『得意分野』を伸ばし、未来に向かって自分らしく歩み続ける力を育んでほしいという思いが見事に重なり、協力して開催することになりました」。
動画配信を利用し、好奇心探究や臨場感のある学びを実現
『清瀬子ども大学 薬学の部~明薬ラボへようこそ~』で実施されたプログラムは、「自分の酵素を調べてみよう」というテーマで、実験を通じて自分の唾液に含まれる酵素が起こす化学反応を調べ、だ液中の酵素(アミラーゼ)の働きについて学ぶ内容です。 実験して終わりではなく、学んだことから「あったらいいな」と思う「夢の酵素」を自分自身で考える課題レポートを大学に提出してもらうという探究型学習形式になっていることがユニークなところ。 テーマへの理解度を勘案し、近隣小学校の5・6年生を対象に参加者を募集。事前告知では40名の定員予定でしたが約2倍の74名の応募があったことから、主催者側は関心の高さを実感し、結局応募した全員に参加してもらうことを決めました。 まず、応募者の自宅に実験キットが送付され、8/1~8/31までの夏休み期間に清瀬市公式Youtubeチャンネルで配信する講義と実験の動画を、自宅などで受講して実験を進めるかたちで実施されました。動画は、明治薬科大学生体機能分析学研究室の月村考宏講師が担当し、講義1→実験→講義2という流れ。講義1動画は、クイズやノーベル賞を受賞した日本の科学者の紹介を交えるなど、子どもの関心が途切れない工夫がされつつ、細胞や酵素の種類や特徴、それらの働きについての説明があり、大学さながらの充実した内容でした。 月村講師が何を研究しているのか、なぜその研究をしようと思ったのかなどの自己紹介のパートもあり、研究者の仕事を知る機会にもなりました。