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基調的な物価は中期下落トレンドへ:事実上放棄された日銀2%物価目標

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NRI研究員の時事解説

基調的な消費者物価は既にマイナストレンドに

総務省が5月22日に発表した4月消費者物価統計で、生鮮食品を除くコア指数は前年同月比で-0.2%と下落に転じた。下落は2016年12月以来のことである。新型コロナウイルス問題が物価上昇率を大きく押し下げていることは疑いがない。特に4月は、世界経済の悪化を背景とする海外原油市況の下落によって、国内のガソリン価格が低下したことが、物価指数の下落に大きく寄与している。それに加えて、インバウンド需要の消失や国内消費の自粛による、宿泊料、外国パック料金の下落も顕著となっている。 生鮮食品を除くコア指数から、エネルギー関連と消費税率引き上げの影響を除く、いわゆるコアコア指数を見ると、4月は前年同月比0.0%と、1月の同+0.6%から急速に低下している。基調的な消費者物価は、既にマイナストレンドに入ったのである。

基調的な物価の下落は5年続くか

ところで、この基調的な消費者物価指数の下落は、一時的な現象にはとどまらないはずだ。筆者の現時点での見通しでは、実質GDPが、マイナス成長に陥る前の2019年7-9月期の水準を取り戻すのは、2024年10-12月期である。リーマンショック後と同様に、実質GDPがそれ以前の水準を取り戻すのに、5年1四半期かかることになる。 経済がこのような経路を辿れば、従来よりも経済の需給関係が悪化した状態が長く続くことになる。それが、物価上昇率を長らく押し下げるだろう。 新型コロナウイルス問題が生じる前には、生産能力の成長トレンドである潜在成長率は、年0.6%程度であったと推定される(日本銀行による)。その状態が継続するもとで実質GDPが上記のように推移する場合には、「(実質GDP-潜在GDP)÷潜在GDP」、という式で算出される需給ギャップは、向こう5年間、新型コロナウイルス問題が生じなかったケースと比較して、平均で4.5%下振れる計算になる。 需給ギャップが1%悪化すると、物価上昇率は0.24%低下するという統計的な関係(日本銀行による)に基づくと、向こう5年間の物価上昇率は、新型コロナウイルス問題がなかった場合と比べて、毎年平均で1.08%程度下振れる計算となるのだ。 これを踏まえると、一時的な要因を除く基調的な消費者物価の上昇率は、この先数年間にわたって、小幅マイナス水準での推移を続けるだろう。