発熱も怪我も怖い…にしおかすみこ、認知症で糖尿病の母とダウン症の姉と薬の話
2024年の冬はインフルエンザとコロナとマイコプラズマ肺炎が大流行する中、薬不足で治療が滞る危険性もあるという。高齢者や子どもと暮らす人は特に不安を抱くことだろう。 【写真】まるで漫才? 介護のカリスマとにしおかすみこさんのトークライブがスゴイ 認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父と2020年から暮らすにしおかすみこさんも、風邪や怪我にドキドキする人のひとりだ。 にしおかさんが久々に実家に帰った時にゴミ屋敷のようになった家と、明らかに様子がおかしい母親の姿にショックを受けたのは2020年のこと。すぐに同居を決めてからしばらくして精神科に行き軽度の認知症だとわかった。その同居の様子を率直に伝えている連載から書籍になった1冊目『ポンコツ一家』は、2020年の最初から、大黒柱の母が認知症だとわかり、4人での暮らしを進めていく様子が赤裸々に描かれている。そして2024年9月に刊行した2冊目『ポンコツ一家2年目』は、認知症がパワーアップしていく中で、さまざまなパワーアップや葛藤も描かれている。 「壮絶なのに笑って泣ける」 「すみちゃん頑張って!」 「酔っ払いの父、しっかりしろ!」 等々多くの共感の声が寄せられる連載の第40回は、2023年12月の話。2024年ほどインフルは大流行ではなかったが、発熱も怪我も怖い事には変わらない。にしおかさんが直面したものは。
年末が近づくと
2023年12月。年末が近づくと、母はやたらに今年を振り返り出す。 台所でせわしなく洗い物をしている私に、居間からこんなことを言ってくる。 「今年も無事生きられました。ママ、お姉ちゃんのために80までは頑張る。その後はもう想像できないねえ。でも生きててやらなきゃ。難儀だねえ」 ……過ぎている。何とか生きなければという話は普段からよくする。その度に年齢を間違えるが不思議と実年齢より若いはあっても、老いるはない。 「今83歳だよ」と返すと、「うそぉ。そんなバカな。え~?」と電卓を持ち出しパカパカ打ち始める。ときどき「まさか」、「いつの間に」とやり直す声が聞こえる。 頃合いを見て「何歳?」と声を放ると、 「163」。仙人か。何算をしたらそうなった。仕切りカーテンをめくり居間に顔を出すと、座椅子に座った母が電卓を見つめ、「フフフ、ウフフフフ」と涙目だ。そんなに?ツボにはまったの?楽しそうで何よりだ。 少し時間を空けて、母がまた今年を振り返り出す。 「ママ、今年はよく転んだよ。全く情けないねえ」 覚えているのか。少しびっくりだ。私が知っているのは数回だ。どの転倒も瞬間を見ていない。いつも母の事後報告だし、いつ、どこでが本人もわからない。