コロナ禍でイベント激減 オフィスも車も手放した
イベント会社エッグプランニング社長の上村珠美さん(52)が、広島市中区の自宅マンションの一室を見渡した。「ここが実質的な本社です」。昨年5月までは近くにオフィスを構えていた。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う仕事の減少で、売り払った。年末には社用車も手放した。今は東区のシェアオフィスを打ち合わせに使うが、普段は自宅で1人勤務する。 学生時代、司会のアルバイトで携わったイベントで見た子どもの喜ぶ姿を忘れられず、1998年に起業した。ひろしまフラワーフェスティバルのステージや、呉市の公式キャラクター「呉氏(くれし)」のPR会などに関わってきた。「人が集まって思い出をつくる。こんな楽しい仕事はない」。江崎グリコやアサヒ飲料など首都圏の企業が広島で開く販促イベントも多く担ってきた。
■「うちの仕事は全部、人と接する機会…」
異変を感じたのは昨年2月下旬。運営予定の催しが「人と接する機会になる」と中止された。「うちの仕事は全部、人と接する機会だ」―。悪い予感は当たった。年200件余りの仕事が本年度は約30件に減り、売り上げは前年の10分の1になった。多い時で3人いた正社員は辞めてもらった。その中には10年来の仲間も。「主催者がイベントを決断しないと仕事がない」。打つ手がなかった。 日本政策投資銀行は、音楽ライブや国際会議などの中止に伴う全国の経済損失額を昨年3~5月分だけで3兆円超とみる。「主要イベントだけの推計で、実際はさらに大きい」という。 国も支援に動いてはいる。チケット代の割引などをする需要喚起策「Go To イベント」。ただ効果は限定的だ。対象はチケット販売業者などが扱う、大都市圏での大規模イベントが多い。「イート」や「トラベル」のように地方まで恩恵が届いていない。 個人事業で司会などを手掛ける新山真央さん(33)=広島県府中町=は「人が集まるのは悪という認識が広まった。自粛ムードを脱するハードルは高い」と考える。キャラクターショーを屋外で開き、観客数を抑えるなど主催者が神経をすり減らすのを見てきた。「感染者を出さないという実績を重ね、安心して楽しめる開催方法を社会で共有するしかない」と訴える。