身に覚えのない「79万7484円の詐欺・窃盗」の疑いで“自衛官の退職金”が「差止め」? 裁判所が下した「判断」とは
結果的に退職金は受け取れたが…損害賠償請求額「約415万円」の内訳は?
A氏が本件訴訟で請求している損害賠償額414万9066円の内訳は以下の通り。うち284万9066円が取消訴訟の弁護士費用であり、その他は「精神的損害」(慰謝料)となっている。 【経済的損害】 ・「支払い差止め処分」の取消訴訟(取下げ済)にかかった弁護士費用: 284万9066円 【精神的損害】(合計130万円) ・冤罪による精神的苦痛:50万円 ・娘の七五三を祝えなかったこと:10万円 ・特別昇進の取消し:30万円 ・送別会行事を辞退せざるを得なかったこと:10万円 ・自衛隊元同僚との交流途絶:20万円 ・生活困窮によりオートバイを売却せざるを得なかったこと:10万円 国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求を行うには、国の違法な行為によって、原告の損害が発生したという「因果関係」が必要とされる。 この点について、A氏と指宿弁護士は、もしもA氏が「支払い差止め処分の取消訴訟」を提起しなかったら、退職手当等の支払いを受けることができなかった可能性があったと指摘する。 A氏:「退職手当等の支払い差止めの処分を受けた際、理由として示された内容が『懲戒免職相当』というものだったので、処分が取り消されない限り、退職手当等を受け取ることができないものだと思った」 指宿弁護士:「もし、A氏が『支払い差止め処分の取消訴訟』をしていなかったら、退職手当等が支払われなかったのではないかと危惧している。 A氏が取消訴訟を起こし、訴訟手続きのなかでA氏の正当性を主張したからこそ、自衛隊側も最終的に退職手当等を支払わざるを得なかったのだと考えている。 A氏は取消訴訟を提起せざるを得なかったというべきだ」
「ミス」はあったがその都度修正…まったく身に覚えのない「79万7484円」
A氏は、業務において細かなミスはあったものの、「79万7484円」という多額になることは考えられず、犯罪の故意も一切なかったと述べる。 A氏:「私は、申込一覧表を作成するごとに上司にうかがいを立ててチェックを受けていた。『行のズレ』や『月の書き間違い』などのミスの指摘を受けた程度で、いずれも重大なものではない。 また、隊員から『この日は休みなので消してください』とか『すみません、行を間違えました』とか、修正を頼まれたことはある。それらを受けて、私は、人間誰しも間違いがあるので責めても仕方ないと思い、一切とがめることなく対応していた。まさか、時間が経って、それが自分にこんな形で返ってくるとは思わなかった。 上司からミスの指摘を受けたら、金額はその都度修正されており、大きなズレがあったとは考えにくい。79万7484円もの多額の損害を発生させた覚えは全くない」