生き残ることが“成功”か――「かせぐ」に挑む小さな町の改革と住民のリアル #ydocs
「かせぐ」は高齢者福祉にも
消滅可能性自治体が消滅を回避するために最も必要なのは生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口)の増加だ。西川町が「かせぐ」ことに力をいれるのは、その最終的な目的に加え、町立病院やインフラの維持にあるいっていいだろう。 しかし、今、西川町に住んでいる人たちは「かせぐ」恩恵を受けているのだろうか? 秋めいてきた10月、町内の空き店舗に多くの高齢者が集まっていた。ここは住民同士の交流を目的に開設された施設「いきいきサロン さらぬま」。施設を運営する黒田益幸さん(76)は、3代続いた日用品店を今年5月に閉め、町の補助を得てサロンに改修した。サロン内にはお茶のみスペースの他、カラオケや卓球台、囲碁、将棋、全自動麻雀卓も設置されている。集まった住民の志向に合わせて、娯楽を楽しめる充実ぶりだ。 黒田さんは 「80、90歳で店をやめても何もできないので、元気なうちにやりたいという思いがあった」とサロンに改修した理由を語った。 実は、西川町は23年度、サウナ、NFT事業などの収益を活用し、高齢者の福祉活動の促進や町立病院の健全経営の維持などに必要な資金にあてるための「西川町高齢者支援等かせぐ基金」を設置。サロンへの補助はここから出ている。今年度は同様の複数の交流施設に対し、合わせて500万円を補助。「かせぐ」は未来の西川町のためだけでなく、当然、現在の西川町の住民のためでもあるのだ。 菅野町長は語る。 「『何かヒントがあるぞ』『こうやっていけばいいんだ』と他が参考にできるような町になれたらいいと思う。そのために、いろいろなことにチャレンジして、私たちは“成功”しなければいけない」 生き残ることが“成功”なのか。町民は何を望むのか。 70代の町内会長の男性は 「人口が倍になれば幸せというわけではないと思うので、これまで暮らしてきた町民も幸せを感じられるような町づくりも必要かなと思う」と話す。 全国で半数近い自治体が今、瀬戸際に立たされている。少なくなる一方の生産年齢人口を消滅可能性自治体同士で奪い合っていても、財政的に疲弊する一方で、根本的な問題は解決されない。「かせぐ」にこだわる西川町の取り組みが、住民の「幸せ」につながるのかどうか。今後も注目していきたい。 ※この記事はYBC山形放送とYahoo!ニュース ドキュメンタリーの共同連携企画です。#Yahooニュースドキュメンタリー #YBC山形放送