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「ゲルニカ」本日開幕、上白石萌歌「人々の営み丁寧に描く」中山優馬は体当たりでスパイ役

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ステージナタリー

昨日9月3日、東京・PARCO劇場で本日4日に初日を迎える「ゲルニカ」の公開フォトコールと会見が行われた。 【写真】左から早霧せいな、中山優馬、キムラ緑子、上白石萌歌、勝地涼。(メディアギャラリー他12件) 「ゲルニカ」はパブロ・ピカソがスペインのゲルニカ無差別爆撃を描いた絵画をモチーフに、長田育恵が脚本、栗山民也が演出を手がける新作。本作は栗山が20年以上構想を温めてきた作品となる。 フォトコールは1幕後半、上白石萌歌演じるサラが食堂にやってくる場面からスタート。なじみの料理人イシドロを訪ねてきたサラの姿に、人民戦線の兵士たちが苛立ちをぶつける様子からは張り詰めた町の空気が伝わってくる。兵士のハビエル、アントニオをそれぞれ演じる玉置玲央と後藤剛範は、不満を募らせる兵士の高ぶりを緩急ある演技で表現。また、サラと共に食堂にいた女中を母マリアが叱責するシーンでは、マリア役のキムラ緑子が硬い表情で静かに怒りを表した。自分の意見を聞き入れない母の姿に絶望し、自らの道を進むために家出を決意するサラの変化を、上白石が語調強く浮かび上がらせる。 中山優馬は、人民戦線の兵士で、実はドイツ軍のスパイとして暗躍するイグナシオを演じる。鉢合わせた兵士にとっさに銃を放った衝撃と葛藤を、中山は詩を紡ぐかのようなセリフ回しと激しい身体表現で表出させ、死について自問するさまを体当たりで演じた。 場面が変わり、イルンで取材をする海外特派員のクリフとレイチェルが登場。レイチェル役の早霧せいなは、戦線に飛び込む女性記者の姿を情熱的かつ知的に立ち上げる。一方、クリフ役の勝地涼はずる賢さと野蛮さを感じさせる役作りで演技巧者の魅力を放った。2人の掛け合いがどう展開し、サラへとたどり着くのか、観る者の興味を引く。 「ゲルニカ」を題材にしている本作は、公開されたシーンだけでも、ところどころで重低音が響き、不穏な空気が満ちる。ラストには登場人物が民族的な音楽に乗せて声を上げ、手を叩き、足を踏み鳴らして幕引き。2幕での彼らのドラマの胎動を感じさせた。 その後の会見には上白石、中山、勝地、早霧、キムラが登壇。上白石は開幕に際し「いつも以上に特別な感情を抱いています」と言い、「もう少し先だろうなと思っていた栗山さんとの舞台、とてもうれしいです。栗山さんは稽古中に食べているおせんべいを半分くださったり、柔らかいお人柄の中に鋭い視点を持っていらっしゃる。最後まで栗山さんの言葉だけを信じて皆さんと一緒に駆け抜けたいです」とコメント。 初日に向けて「やる気に満ちております」と語る中山は、複雑な役どころについて問われると「“実はスパイ”という役ですが、人間味あふれる青年だなと思いました。演じるうえで“若さ”が大事だなと感じていて、サラとの関係性ではそこを意識しています。1人のシーンが多いので、自分との闘いでもありますね」と確かめるように語った。 また、勝地扮するクリフは、ピカソにゲルニカ爆撃を伝えた実在の人物がもと。勝地自身、「『ゲルニカ』をピカソが描いたという知識しかなかった」と明かしたうえで、「描かれているのは日常で、それが突然、切られてしまう物語。裏側を知っていたほうがより楽しめると思いますが、背景を知らなくても伝わるものはあるはず。最後に“沈黙は罪人だ”というセリフがあるのですが、僕にも刺さりました。ぜひ今の方々に観ていただきたいです」と述べた。 そんな勝地とステージ上でバディとなる早霧は「レイチェルは事実を正確に伝えるべきだという強い正義感と理論で武装した、硬くて不器用な女性。そこをクリフは見抜いていて、記者だからこそ正直な言葉でお互いがぶつかり合う仲です。信頼があるからこそぶつかることができるので、お稽古場から涼くんとはコミュニケーションを重ねて。信頼関係を築けていると思うんですけど……」と大きく身を乗り出して勝地をチラリ。それに気付いた勝地は「あ、はい!」と応じた。「さらに深めて1回1回の公演を大切に生きていきたいです」と早霧は続けた。 新しくなったPARCO劇場についてキムラは「すっかり違う印象」と一言。「今の劇場には自分の部屋に窓があって、渋谷の街を見渡せるんです。渋谷の真ん中にある劇場で、すごいパッションで作品を世に生み出していく。面白い場に出させてもらっている」と感慨深げ。マリア役については「(栗山から)『人形の家』のノラのような役だと聞いていて。サラが苦に感じた世界に生きる女性として、サラに対して圧していく存在でありたい。想像することが多すぎてめまいがしそうですが(笑)、スペインだけでなく、今の日本、世界の中の日本、今の自分を考えられるきっかけになれたら」と力強く語った。 最後に中山は「希望や運命といった概念を目撃できる舞台。その概念が科学的な兵器で壊される、そこにどういう人が生きていたのか、ぜひ目撃していただきたいです。劇場でお待ちしております」と来場を呼びかけ、上白石は「目に見えない不安や敵と闘うという状況は今と通じるものがあるなと感じます。悲痛さや苦しみの中でも、それに争う気持ちや希望を見出す人々の営みが丁寧描かれていて。気難しいことは考えずに、新しいPARCO劇場に足を運んでいただけたら」と会見を締め括った。 上演時間は20分の途中休憩を含む約2時間50分。東京公演は9月27日までPARCO劇場で行われ、10月9日から11日まで京都・京都劇場、17・18日に新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館、23日から25日まで愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール、31日から11月1日まで福岡・北九州芸術劇場 大ホールで上演される。 ■ PARCO劇場 オープニング・シリーズ「ゲルニカ」 2020年9月4日(金)~27日(日) 東京都 PARCO劇場 2020年10月9日(金)~11日(日) 京都府 京都劇場 2020年10月17日(土)・18日(日) 新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場 2020年10月23日(金)~25日(日) 愛知県 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール 2020年10月31日(土)・11月1日(日) 福岡県 北九州芸術劇場 大ホール 作:長田育恵 演出:栗山民也 出演:上白石萌歌、中山優馬、勝地涼、早霧せいな、玉置玲央、松島庄汰、林田一高、後藤剛範、谷川昭一朗、石村みか、谷田歩、キムラ緑子

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