風間俊介は時代を象徴する俳優だ 『それでも俺は、妻としたい』ダメ夫役は“笑い”に期待
風間俊介の演技の変遷からみる時代の変化
風間の役柄の変遷に、成馬氏は時代の変化を見出す。 「『silent』を観ていて面白かったのは、少し前だったら風間さんが演じる春尾正輝のような人の方がドラマの主人公だったと思うんですよね。でもあの作品は基本的に性善説で成り立っていて、真面目で優しい人々が中心の世界に、ひねくれた大人として春尾がいるという距離感になっていて、世代が完全に一巡したなと感じました。僕はいま40代後半ですが、僕より少し下の世代くらいまでは、善意を示すことにためらいがあって、何か言い訳を経由しないと善意を示すことができない。そういうねじれた内面を抱えた青年役を演じてきたからこそ、風間さんは氷河期世代を象徴する俳優になった。でも、そういう価値観はもう、今の若者の考え方の中心ではなくなったのだなと思いました。90代末から2010年代前半までの風間さんは、時代の闇を象徴するような俳優だったのですが、時代の変化に対応してか、あるいは本人がもともと持っていた資質がバラエティ番組などに出演することで多くの人々に受け入れらるようになったからか、どんどん庶民的な親しみを感じる存在へと変わっていった。風間さんや、同世代の錦戸亮さんは、心に闇を抱えた不気味な青年をたびたび演じているのですが、『自身の演じている人物のことがわからない』と素直に明かしているんです。ホアキン・フェニックスやロバート・デ・ニーロのように実も心も役に成り切るメソッド演技とは違い、演じる役柄に対して一定の距離を保ったまま演じている。だからこそ、観ている側も不安になる不穏さが宿り、「自分のことがよくわからない人」をしっかりと演じられる。危うい内面を抱えた青年を演じる時も適切な距離感を保つことができたからこそ、どんな役を演じてもバランス感覚が生まれるのではないかと思います」 風間の独自のキャリアから成り立ったイメージは、『それでも俺は、妻としたい』でどのように発揮されるのか。本作の監督・脚本を務める足立との相性について成馬氏はこう分析する。 「足立さんは『ブギウギ』をはじめ人情ドラマの非喜劇を描くことに長けた方。セックスレスの話というと、『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)のような作風がありますが、もう少しライトなコメディテイストの人情ものの話になるのではないかと。風間さんがいま“笑い”をどんなふうに演じるのかとても楽しみですね」 『それでも俺は、妻としたい』の放送開始は2025年1月。長年積み上げてきた風間の演技力がどのように発揮されるのか見ものだ。
徳田要太