松山ケンイチさん『廃棄される皮を革へ』里山暮らしで心動いた“宝もの”とは?|VERY
東京の老舗帽子メーカー「トーキョーハット」と「シマデニムワークス」とのトリプルコラボにより実現した、バケットハット。
里山暮らしは出会いの連続いま、俳優業のベースを作るもの
──俳優業以外に、農業や「momiji」のプロジェクトに邁進する原動力はなんだと思いますか? やっぱり、何かを知りたいっていうことでしかないんですよね。俳優をやっていても、演技について知りたいって思ったときは、過去の映画をひたすら見て、やっぱりすごいな、どうやってるんだろうなって想像して研究して、自分に生かしていった感じです。 そんな好奇心がある程度落ち着いてくると、技術的な表現だけではなくて、本物を見たくなったんですよね。俳優業にはその人自身が持っている感性みたいなものこそ大事で、それが新鮮味でもあるということ。僕が鹿と出会ったのは、そういう時期でもあったわけです。 鹿を狩るハンターだったり、鹿の被害に遭っている農家だったり、プロフェッショナルとして生きる人たちと知り合っていく中で、彼らの話も生き方も、全部が自分にとって身になるものだったんです。面白いな面白いな、と思ってどんどん質問していくと、全部答えてくれる存在でした。
それで今度は、撮影の現場に入っていったとき、驚いたのは、自分の引き出しがすごく増えていたことだったんです。人とコミュニケーションをとって、いろんな人の考え方とか環境みたいなものを汲んでいく中で、俳優としての引き出しが結果的に増えたんです。やっぱり自分の足で動いて自分の目で見て自分で体験することがどれだけ大事なことなのかっていうのも、この活動を通してよくわかりました。だから、俳優や演技のためにやっているっていうような言い方もできますし、逆に、僕が俳優だからこそ発信することで注目をしてくれる方もいるという、良いバランスなんだと思います。 地方の伝統工芸の職人さんに会っても、「朝ドラ出ている人だよね」って、それだけで壁を越えられるわけですから。「momiji」も俳優も、お互いがお互いをうまく進ませてくれるような状況だと思っています。