松山ケンイチさん『廃棄される皮を革へ』里山暮らしで心動いた“宝もの”とは?|VERY
──個人的な活動だった「momiji」は、その後どのように広がっていったのですか? 個人のハンターだったら、狩猟をしたその場で解体をして、皮はそのまま土の中に埋めることで自然に還っていくという循環ができるんですが、解体場から出た皮は全部、産業廃棄物として焼却処分になってしまうので、できる限り、解体場から廃棄されるはずの皮を引き取っています。 ──引き取った皮を本革にして、松山さんが商品をデザイン・プロデュースしていくのですね? 引き取った数百枚単位の皮をきちんと製品に変えることで、より多くの方に使ってもらいたくて、鹿革の帽子や今日着てるレザージャケットなどを作っています。メーカーさんには、鹿革そのものを販売したりもしています。
狩猟で捕獲された「momiji」の鹿革を使って制作された、ライダーズベスト。着込むほどにやわらかく身体になじみ、味わいが生まれる。
「もったいない」からはじまった日本中の“宝もの”探し
──日本全国の「もったいない」に目を向けると、たくさんの可能性がありますよね。最近は、どんな取り組みをされているのですか? 今回は「シマデニムワークス」とコラボして、沖縄県のサトウキビを精製するときに搾りカスとして出る「バガス」という端材を主原料にしたデニムを発表します。沖縄県内でも年間20万トン発生するバガスは、有効活用しきれていない状況でした。このバガスをパウダー状にし、日本古来の技術で和紙に変え、さらにそれを細かくスリットし撚り合わせて作った和紙糸から、デニムが作られているんです。
「シマデニムワークス」とのコラボにより誕生したデニムを、松山さんはスタイリッシュに穿きこなす。小さいサイズなら女性も穿くことができる。 和紙糸で作ったデニム生地は、綿よりも軽くて、吸水性も高く、速乾性もある独特な肌触り。アップサイクルから生まれたデニムとして、他にトートバッグや、「トーキョーハット」とトリプルコラボした帽子も制作しました。 ──サトウキビから作られたデニムの穿き心地はどうですか? 僕は農業もやっているので、「農業にも耐えられるもの」ということをテーマに作っています。釣りにも行くし、山にも行く、そして東京で仕事をする時も。だから、どこにいっても活躍するような、普段着のかっこよさと、動きやすいパターンにこだわっています。