《ペルー在住者レポート》生活不安でストライキ多発=大統領不支持率は首都圏88%に=制憲議会問題が再燃
再燃した制憲議会問題=「否決されればプランB」
4月25日、激動のペルー社会を更なる衝撃が襲った。新憲法制定を望むカスティージョ大統領が、制憲議会招集の是非について問う国民投票法案を国会に提出したのだ。 制憲議会による新憲法制定は、政権与党ペルー・リブレ党主導で行われる見込みで、憲法にどのような修正がされるかがはっきりしていない。これに不安を覚える国民や投資家は多く、ミルタ・バスケス氏が21年10月6日に首相に就任した際「制憲議会の発足は政府としての優先事項ではない」と発言、現在のアニバル・トレス首相も「現政権では制憲議会については推進しない」と明言したことで不安は和らぎつつあった。それにもかかわらず、同法案が提出されたことにより、再度、不安が再燃することとなった。 制憲議会招集の推進を優先すべきと考える国民は、4月27日にエル・コメルシオ紙に掲載された調査会社イプソス・ペルー社の世論調査によれば、リマ首都圏ではわずか7%。地方でも同じ割合であり、国民の支持は全く得られていない。 2017年ベネズエラにおいて、マドゥロ大統領が制憲議会の発足を強引に進め、国会から立法権などの権限を剥奪し、独裁体制を確立した事例がある。 制憲議会に対しペルー国民及び企業家、投資家は恐怖心を抱いている。現在のペルー国会は、野党が議席の過半数を抑えており、同法案が可決される可能性は低い。 しかし、制憲議会招集による新憲法の制定は、カスティージョ大統領が所属するペルー・リブレ党のウラジミール・セロン党首が強く主張する政策。セロン党首は「同法案が否決された場合には、国会に対してのプランBがある」と発言するなど国会に対して圧力を強める姿勢を見せており、予断を許さない状況が続いている。
【筆者略歴】都丸大輔(とまるだいすけ)。青森県生まれ東京都育ち、将棋三段、日本語教育能力試験合格。日本では教育委員会の嘱託職員として外国人児童の日本語教育、学校生活の支援に取り組むとともに、スペイン語圏話者向けの個人レッスン専門の日本語教師、スペイン語通訳に従事。2012年からペルーに定住し、個人レッスンを中心とした日本語教育に携わりながら、ペルーにおける将棋普及活動に取り組む。2017年からはペルー日系社会のためのスペイン語と日本語の二カ国語の新聞を発行するペルー新報社(https://www.perushimpo.com/)の日本語編集部編集長に就任。2021年からはねこまど将棋教室の将棋講師として、オンラインでの将棋の普及活動にも取り組んでいる。