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徒歩2時間半…、路面に残る「SOS」 今なお全住民避難、豪雨被災の八代市2集落ルポ

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熊本日日新聞

 熊本県八代市坂本町の山あいに隣り合う市ノ俣[いちのまた]、横様[よこさま]の2集落は、7月の豪雨で現地に通じる唯一の市道が崩れた。災害から間もなく2カ月。計16世帯24人の住民は、今も集落外に避難したままだ。仮道建設に向けた調査をする市職員とともに、歩いて現地に入った。(文=元村彩・益田大也、写真=高見伸)  車で行けるのは、球磨川沿いの国道219号から市道に入り5分ほどの所まで。そこから徒歩で進むと、大規模な土砂崩れが道をふさいでいた。迂回[うかい]路ではひざ下まで水に漬かって川を渡り、山の斜面はロープで登った。  その先の市道も川の氾濫で大きくえぐられたり、岩や石が2メートルほどの高さまで堆積したりして、至る所で寸断されていた。市建設部長の潮崎勝さん(60)は「一日も早く復旧させたいが、被害が大きすぎる」と汗を拭った。  約2時間半歩いて横様集落に到着。市道には黄色く、大きな「SOS」の文字が残っていた。ヘリコプターで救出される前、住民らがスプレーで書いたとみられる。

 家々を見渡すと、浸水や崖崩れの被害はない。一見すると、のどかな山里の風景。しかし、人けはなく、辺りは静まり返っていた。軒先では、洗濯物が風に揺れていた。取り込む間もなく避難したのだろう。  八代市の市街地に家族5人で避難した看護師の山崎まゆみさん(44)は数日前、家の様子を見るため同様に山道をたどった。玄関に入った途端、カビの臭いが鼻を突いたという。「秋冬物の服を残したまま。また歩いて取りに来ないといけないのだろうか」  横様集落から20分歩き、市ノ俣集落に入った。ここでは1軒が土砂崩れの被害に遭ったものの、ほかの民家は無事だった。何かが動き、視線を向けると、シカの親子やイノシシが、わが物顔で歩いていた。  八代市中心部のアパートに避難する会社員の田中幸治さん(54)も、獣の存在を至近距離で感じた。自宅を見に帰ると、縁側の引き戸がこじ開けられていた。障子は倒され、コメなどの食料が食い荒らされていた。「サルの仕業だろう」と田中さん。

 両集落は24日、市道の早期復旧などを市に要望した。横様集落の自治会長、山崎由光さん(72)は、祈るような口ぶりで言った。「畑仕事や地蔵様のお世話をして一日を過ごすような、元の生活に早く戻りたい」

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