ボランティアを定量評価 社員の成長をスコア化
NEC(日本電気)はこのほど、ボランティアを通じて社員の成長を促進する独自プログラムを開発した。ICTの力でボランティア体験の効果を定量的に可視化させ、社内で共有する。ボランティアは企業のCSR活動の中で軽視されがちな活動だったが、社会にも企業にも貢献するエンジンとして注目を集めそうだ。(箕輪 弥生) ボランティア通し社員の成長をスコア化
「ボランティアが人を育てるのは確かだと感じたが、定量評価する手法がなかった」。こう話すのは、プログラム開発にかかわるNEC 東京オリンピック・パラリンピック推進本部エキスパートの橋直紀さんだ。 そこで同社は、法政大学大学院の石山恒貴教授に助けを求めた。石山教授は「越境学習」の研究者だ。会社員にとっての越境学習とは、業務外で得た学びを職場に還元することを指す。 普段の業務では接しない人と出会い、ともに活動するボランティアは、まさに「越境学習」と考えたのだ。このほど開発したプログラムでは、ボランティアに参加した社員がどう変化したのか、石山教授とともに定義した人材育成に効果がある29の要素から把握できるようにした。 NECグループでの実践を通して、プログラムを開発したが、実践の結果、効果測定のいずれの要素も、ボランティアに参加しなかった社員に比べて、参加した社員の得点が高かったという。
人材交流にも効果発揮
コロナ禍では人材交流にもボランティアが一役買った。社内で実施した取り組みでは、ボランティア終了後に活動参加者を対象とした振り返りの場をオンラインで提供。コロナ禍で交流が減る中、社内の縦横斜めの人材交流にも貢献した。 留学などと比べて、ボランティアは誰でもできる越境学習だ。橋さんは「社員の成長を底上げできる」と強調する。そもそも橋さんがボランティアに着目し始めたのは2016年のスーパーラグビーのボランティアがきっかけだ。その経験を踏まえて、ボランティア運営を一元管理できるプログラム「ボランティア支援サービス」を開発し、2018年から提供を始めていた。