「なぜ殺処分した/仕方ない」秋田のクマ駆除対応、猟友会が引き金を引かなかった理由
12月2日、秋田市内のスーパーに立て籠っていた体長約1メートルのクマが捕獲された。 【写真】「かわいすぎる」と話題になったクマ注意喚起のチラシ 「このクマは11月30日にスーパーに出没し、男性従業員にケガを負わせた後、2日間以上、店内に留まっていました。12月2日、設置した“わな”にかかっているのが確認され、無事捕獲されました。捕獲後に殺処分されましたが、秋田県や秋田市には“クマを殺さないで”と抗議の電話やメールが殺到したというニュースも話題になるほどでした」(全国紙社会部記者、以下同)
猟友会も出動も引き金を引かなかった理由
この抗議電話に対し、ネット上では、 《かわいそうだけど、殺処分するしかないよね》 《また人の生活圏に降りてきて、人的被害が出ちゃうこともあるだろうし、仕方ない》 など、クマの処遇に納得する声が上がる一方で、 《結局、殺処分するなら、もう少し早く対応できたんじゃないか? 時間かかりすぎでしょ》 といった声も散見された。今回、クマやイノシシなどの駆除を行う猟友会も出動していたが、引き金を引くことはなかったという。いったいなぜなのか。弁護士法人ユア・エースの正木絢生(けんしょう)代表弁護士によると、 「今回のようにスーパーに留まっていたクマを駆除するような場合、『鳥獣保護管理法』の38条2項により、スーパーのような多数の者が集合する場所である住居集合地域では猟友会は銃の使用を原則行えません。警察官が『警察官職務執行法』に基づいて指示を出した場合に限り、例外的に銃の使用が可能になります」 害獣駆除業者でもアライグマやイタチなどの対応は可能だというが猟友会が対応できる動物の範囲に関しては、 「動物によって対応の業者が異なるのは、猟友会があくまでボランティア団体であり、市など行政の要請に基づいて出動するにすぎず、営利を目的とする駆逐業者とは異なるという団体の性格によるものと思われます。法律上は猟友会が駆除できる動物はクマやイノシシなどの大型動物に限定されているわけではなく、アライグマやイタチを駆除することも可能です」(前出・正木弁護士、以下同) 過去、クマの対応に当たっていた猟友会をめぐって、事件が起こったことも。 「'18年8月、北海道砂川市の要請に応じて出動した猟友会の男性に対し、“住宅の方向に向け発砲した”とし、道公安委員会から猟銃所持の許可を取り消されるという事案が起こりました。今回の秋田市の場合も、これに該当する可能性があり、警察は発砲を許可しなかったのかもしれません」(前出・全国紙社会部記者) こうした問題が起きてしまった理由について、前出の正木弁護士はこう分析する。 「背景には、行政が猟友会に駆除を丸投げしていたことや法律に明確な定めがないので、責任の所在が不明確になってしまっていることなどが考えられます。 最近では猟友会が市などの要請を拒否する事態が問題となっていますが、現時点では慎重に行動して気を付けることくらいしか打開策がないと思われます。現在、『鳥獣保護管理法』の改正が叫ばれているように、法律を改正し責任の所在を明確にすることが緊喫の課題と考えられます」 人的被害が発生する前に、迅速な対応が取れるように体制を整えてもらいたい。 正木絢生弁護士 弁護士法人ユア・エース代表。第二東京弁護士会所属。消費者トラブルや借金・離婚・労働問題・相続・交通事故など民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。BAYFM『ゆっきーのCan Can do it!』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などメディア出演も多数。YouTubeやTikTokの「マサッキー弁護士チャンネル」にて、法律やお金のことをわかりやすく解説、配信中。