要介護認定を受けた夫94歳、妻92歳の老夫婦。金銭管理を代行する長女夫婦による「経済的虐待」の実態とは。対処法を介護のプロが解説
厚生労働省が公表した「介護保険事業状況報告(暫定)」によると、令和6年8月末時点の要介護(要支援)認定者数は、718.5万人だったそう。そのようななか、介護事業を運営する株式会社アテンド代表の河北美紀さんは「長期戦の介護を乗り切るには、必要な情報を得ることと、そして事前の備えがとても大切」と話します。そこで今回は、河北さんの著書『介護のプロだけが知っている! 介護でもらえる「お金」と「保障」がすらすらわかるノート』から、「介護破産」を避けるための援助のポイントを実例とともにご紹介します。 【書影】申請もれしがちなお金とサービスを、プロの視点でわかりやすく解説!河北美紀『介護のプロだけが知っている! 介護でもらえる「お金」と「保障」がすらすらわかるノート』 * * * * * * * ◆娘に財布を握られ病院も行けない老夫婦を救え 夫婦共に要介護認定を受けている老老介護のYさん夫妻 都内在住のYさん夫妻(夫94歳、妻92歳)。子どもは長女次女の二人ですが、それぞれ所帯を持ち今は夫婦二人暮らしです。ご夫婦共に要介護認定を受けており、夫は要支援2、妻は要介護1で認知症があります。 妻は数時間前のことは覚えていない、外出したら帰れない、同じ話を繰り返すなどの症状があり、それを94歳の夫がサポートするといういわゆる「老老介護」の世帯でした。 夫は辛抱強く妻を見守り、近所のデイサービスにも仲良く一緒に通う姿も見られていました。
◆「通院したい」という親の意向、長女は認めず そんなある日、夫婦でデイサービスに行った際、夫がデイサービスの職員にこんなことを言いました。 「本当は妻を病院に連れて行きたいんだけど、前に外で転んだから外へ出るなって長女に言われているんだ。でも、長女も忙しいみたいでなかなか病院に付き添えないみたいだから、お宅のデイサービスの車で病院に連れて行ってもらえないかな?」というのです。 また、妻には糖尿病があり、放置したことで最近ますます視力が低下したようだと心配していました。 妻があまりにも「見えない見えない」というので市販の目薬を使わせているらしく、これを放置しては危険な状況だと判断した介護職員は、すぐにケアマネジャーへ連絡をしました。 この話を聞いたケアマネジャーも、すぐに通院介助が受けられるよう話を進めてくれたのですが、その話を聞きつけた長女は「両親に病院へ行くお金はないです。介護サービスも、勝手に増やされても困るので待って下さい。」と言ってきたのです。
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