「ノーモア・ヒバクシャ」核廃絶願い込め、折り鶴500羽ノルウェーへ 磐田の2世・磯部さん【ノーベル平和賞授賞式】
10日に開かれた日本原水爆被害者団体協議会(被団協)へのノーベル平和賞授賞式に合わせ、磐田市の被爆2世磯部典子さん(73)はノルウェー・オスロを訪れ、核廃絶の願いを込めた折り鶴500羽を現地の若者らに届けた。帰国後、取材に応じ「被爆者だけでなく、世界中の人々が同じ気持ちになって『ノーモア・ヒバクシャ』を広げてほしい」と強く訴えた。
磯部さんの父杉山秀夫さんは22歳の時、陸軍見習士官として広島市に滞在し、爆心地から約1・2キロ地点で被爆した。かろうじて生き抜いたが、がんを度々発症し、87歳で死去した。生前、静岡県原水爆被害者の会の会長などを務め、核兵器の非人道性を訴えた。 磯部さんは今回、原水爆禁止日本協議会(原水協)などが主催するツアーに参加。「父ら先人の運動はノーベル平和賞に何度もノミネートされ、その度に喜んだり、悔しんだりする姿を近くで見てきた。現地に行き、被団協がどういう風に評価されたのか知りたかった」と思いを語る。 ツアー中は、色とりどりの折り鶴を縫い付けた帽子を身に着けた。現地の人から「ビューティフル」と声をかけられる場面もあった。「子どもたちにも鶴を通じて核廃絶を楽しく伝えられた」と話す。授賞式のパブリックビューイングのほか、現地の学生や平和団体との交流会にも出席。持参した折り鶴を若者らに手渡し「ノーモア・ヒバクシャ、ノーモア・ウォー(戦争)」と呼びかけた。 ロシアのウクライナ侵攻など世界で戦火はやまず、核兵器使用の危険性が高まっている今。磯部さんは「平和賞を受賞したのは核戦争の危機がかつてないほど近づいているという『瀬戸際』を意味している」と危機感を示す。「被爆2世は被爆者の証言を直接聞いてきた。授賞式を見て、その証言は貴重なものだと改めて肌で感じた」と振り返り、「過酷な運動を続けてきた被爆者から引き継いだ証言を次世代に伝え、核兵器禁止条約への賛同を広げていきたい」と決意を新たにした。