三笠宮妃・百合子さま 国内最高齢“目の見えないゾウ”に託された「平和への想い」
「宮さまは、歴史研究のなかで、戦争がない社会をつくるためには、平和の期間を長く保つために最大の努力を尽くさねばならない、という強い思いがありました。 百合子さまも、表立って『平和への思い』を語ることはなくとも、宮さまに寄り添って生きてきた歩みそのものから強い信念を感じられます。 戦争によって不幸な状況に追いやられるのは人間だけでない。動物園に行くとゾウに会える、という当たり前のことが、どれだけ尊いことかを示されたのではないでしょうか」 2002年に三男の高円宮憲仁さま、2012年に“ヒゲの殿下”と親しまれた長男の寬仁さま、2014年には次男の桂宮宜仁さまと、3人のご子息に相次いで先立たれた。 2016年には、70年以上の歳月をともに歩まれた三笠宮さまが100歳で息を引き取られた。 その後、百合子さまは、当主として三笠宮家を守ってこられた。 「百合子さまは、毅然たる芯の強さをお持ちになりながらも、さまざまな困難にあっても動揺せず、ひとつひとつを受け止めながら、強いお心で皇室の品格を支えてこられたと思います。 愚痴のような言葉はあまりうかがったことはありません。また気丈で心の強さがあることも当然ながら、事態に柔軟に対応していくお力も備えておられたのだろうと感じます」 ■もっと子供たちを笑顔にしてほしい 社会貢献活動に熱心だった百合子さまは、社会福祉法人恩師財団「母子愛育会」の総裁を62年間にわたってつとめられた。 「社会的に困難な立場にある人々へのまなざし、皇室の国民への歩み寄りの姿勢を百合子さまは持ち続けられたと思います。そこにはスリランカのご訪問が影響していると思います。 そのような百合子さまの姿勢が国民の皇室への敬愛を深めてきたともいえます。戦前戦後を貫く皇室のよき伝統を守られてきたお一人でした」 そんな百合子さまの傍らには、いつも68年前にスリランカを訪問されたときの記念品であるゾウの置物があったという。 アヌーラは、今日も元気で子供たちの前を悠然と歩いている。 「アヌーラは優しいゾウで、頭もいいです。海外の動物園にいる高齢のゾウのなかには、認知症のような症状が出て、自分が帰る場所がわからなくなったりするゾウもいるようですが、アヌーラはしっかり自分の居場所に戻ります。 最近、歯がすりへってきているのか消化が落ち、エサの草も細かく切ってから与えるようにしています。 長生きして、もっと子供たちを笑顔にしてほしいですからね」(齋藤さん) 大正、昭和、平成、令和と激動の時代を生き抜かれた百合子さまの思いを、きっとアヌーラが受け継いでくれるはずだ。
「女性自身」2024年12月10日号