競技はヨガ、カバディ、コ・コの声も インド五輪招致、先進国忌避でIOCには救世主か
「巨象」がついに動いた。インドが2036年開催予定の夏季五輪・パラリンピック招致で第1段階に当たる「対話ステージ」に入り、祭典開催へ本格的にかじを切った。著しい経済成長を踏まえ、国力をアピールする舞台としたいとの思惑も透ける。ただ、インドは世界最多の人口を抱えながら、五輪ではこれまで目ぼしい成果をあげられなかったのも事実だ。国際オリンピック委員会(IOC)にはインドの持つ歴史と文化的多様性を訴えて招致を目指しており、IOC側も先進国で五輪招致への機運が薄れている現状も踏まえ、インドという「新たなドル箱」に期待を寄せているようだ。 ■世界最多の人口もスポーツでは「小国」 昨年末、インド・ムンバイで開かれたIOC総会で、モディ首相は「五輪開催を楽しみにしている。あらゆる選択肢を検討するつもりだ」と明言した。そして続けた。「五輪はインドの夢だ」。 経済発展を果たしたアジアの複数の国では、その象徴のように五輪を開いてきた。東京は1964年と2021年、ソウルは1988年、北京は2008年といった具合にだ。国内総生産で旧宗主国の英国を抜き、世界5位に上がったインドも同じの道を目指しているように見える。ただ、国威発揚に五輪がどれだけ寄与するかは不透明だ。 インドの人口は約14億3千万人で中国を抜き世界最多を誇る。だが、五輪での存在感は乏しい面が否めなかった。1947年の独立後、48年ロンドン大会からの20大会で通算獲得メダル数は36。金は7に留まる。今年7月のパリ五輪では金ゼロに終わった。似た人口規模を持ち、700以上のメダルを獲得している中国との格差は際立つ。 ■魅力的なインドの経済力、ライバルは中東か ただ、IOCはインドの立候補を歓迎する姿勢が目立つ。東京五輪の関係者は「費用が高騰して手を引く先進国が多い」と語るように、スポーツインフラ以外でも多額の経費がかかる五輪への関心は、先進国で低下傾向にある。 IOCはムンバイでの総会で、インドの国民的競技であるクリケットの採用を決めた。テレビ放映権での高収入を見込むとともに、トヨタなど日本企業3社が抜けた最高スポンサーにインド企業の参入を促す狙いも垣間見える。現地報道によると、IOCのマーケティング担当者は「インドは商業的に大きな可能性がある。インドからのスポンサーも早期に決まると思う」と話した。