シリア各地に割拠する反体制派 イスラム過激派、親トルコ、クルド人…政権崩壊で混乱必至
アサド政権が崩壊したシリアは2011年に始まった内戦の結果、各地にさまざまな反体制派が複雑な形で割拠する事態となった。それぞれ利害が異なる上、イスラム過激派は離合集散を繰り返すなどしており、政権崩壊後の情勢が混乱するのは必至だ。 【写真】シリアのダマスカスで、壊れたアサド大統領の父、故ハフェズ・アサド大統領の像を踏む反体制派の戦闘員 シリア北西部イドリブには、アサド政権側との戦闘を主導したイスラム過激派「シリア解放機構」(HTS)などが根を張る。HTSは内戦開始直後に活動を活発化させた「ヌスラ戦線」を前身とする。16年に忠誠を誓った国際テロ組織アルカーイダとの決別を宣言し、他組織と合併して改名した。米国などはテロ組織に指定している。 北部のトルコ国境に面する一帯は、トルコのエルドアン政権が肩入れする「シリア国民軍」(SNA)の支配地域だ。HTSとともに政権側への攻撃に加わった。エルドアン大統領はアサド政権の退陣を求め、反体制派を通じてシリアへの影響力浸透を図ってきた。 また、北東部は少数民族クルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」(SDF)が支配している。エルドアン政権はトルコ国内の非合法武装組織「クルド労働者党」(PKK)の分派だとして、過去にSDFに対する越境攻撃を行った。 さらに、東部の一部地域では小規模ながらイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)が暗躍する。かつてシリアとイラクにまたがる広い範囲を制圧したが、米軍と連携したSDFなどの攻撃を受け、19年に支配地域を全て失った。東部にはISの勢力回復を警戒する米軍が兵士約900人を駐留させている。 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、クルド人勢力は北東部に施設を設けてIS戦闘員ら数万人を拘束している。過去にISがこれらの施設を襲撃したこともあり、仮に戦闘員らが大量脱走すれば治安の悪化がシリアにとどまらず、周辺地域に飛び火する恐れもある。(カイロ 佐藤貴生)